第41章 【番外編】「娘さんを下さい‼︎」※
「お初にお目にかかります。宇髄天元と申します。」
天元は口が悪い。
でも、実は誰よりも常識人だ。
産屋敷様に失礼なことを言ったことはないし、空気も読める。
そういうところも含めて、天元の下に嫁げるなんて幸せだと思っている。
「こんな山奥までわざわざすまなかったね。ほの花の父の宗一郎です。」
「母の灯里でございます。どうぞ、楽にして下さいね。」
「とんでもありません。お時間を頂き、ありがとうございます。」
だから私が挨拶に来てくれると言ってくれた時に真っ先に思い浮かんだのは口の悪い彼がちゃんと挨拶ができるかなんてことではない。
「まさかほの花が殿方を連れて帰ってくるなんて思いもよらなかったですね。宗一郎さん。」
「嫁ぎ先が無いのではないかと思っていたが、手紙をもらってから今この目で見るまで夢ではないかと思った程だよ。本当によく来てくれたね。」
両親は私の嫁ぎ先がないことを憂いていたことを知っていたし、半ば諦めかけていたことも分かっていた。里にいた最後らへんは腫れ物を扱うかのようだったので、私も申し訳ないと思っていたくらい。
それなのにまさか産屋敷様のところに行ったことで結婚相手を見つけて来たなんて誰も思わないだろう。
本当に嬉しそうに笑ってくれている両親を見ると鼻の奥がツンとしてしまう。
結婚の挨拶で父親が連れてきた結婚相手を罵倒するよく見るアレも心配ないのが見て取れる。
天元でも両親でもない。
私の心配はたった一つ。
「父上、そんなどこの馬の骨かも分からぬ男に易々とほの花を嫁がせていいものかよくお考えください。」
「そうです。ほの花は男に免疫がない故、騙されているやもしれません。」
「だから反対したのです。産屋敷のところへ行かせるなど。」
「正宗達は何をしていたのだ?護衛の本分を忘れてやしないか?すぐにここに呼び寄せろ。」
そう。
四人のお兄様達に他ならない。
声のした方に視線を向けると明らかに天元に敵意を剥き出しにした彼らに私は自ら歩み出た。