第41章 【番外編】「娘さんを下さい‼︎」※
「はぁー…緊張する…。はぁ…。」
「何でお前の実家に行くのに俺よりお前が緊張してんだよ。熱出すぞ、考えんな。」
最終決戦以後、穏やかな時間を過ごしてきたが、ほの花の体調が漸く落ち着いてきたこともあり、とある提案をしてみた。
"ほの花の親に結婚の挨拶に行くということ"だ。
とんとん拍子に話は進み、翌週には陰陽師の里へと向かうことになり、久しぶりの遠出に心躍る…ことはなく、ため息ばかりを吐いているほの花。
本来ならば婚約の時点で行くべきであったが、なんだかんだで行けずに時が過ぎてしまったことは心底申し訳ない。
大切な娘をどこの馬の骨かもわからない男に手篭めにされていたなんて知ったら発狂するのではないかと思い、俺も少しばかり緊張しているのだが、それよりも何故かほの花の方がずっと緊張していることに首を傾げる。
すると後ろから正宗が声をかけてきた。
「ハハッ、ほの花様はお兄様達が心配なんでしょう?」
「兄君達?」
今回の旅は俺らと同時に結婚の挨拶に行くと言って付いてきた正宗達と雛鶴達も同伴だ。
皆それぞれの相手の隣で手を繋いで歩いているのはいつもの光景なのだが、一人で肩を落とすほの花に正宗達以外はキョトンとしている状態だ。
すると、ほの花はチラッと後ろを向いてコクンと頷いた。
一体何の心配をしているやら、不安げなほの花の頭をポンポンと撫でると「どうした?」と聞いてやる。
肩を落としたまま地面を見ているほの花だけど、ゆっくりと口を開くと小さな声が聞こえて来る。
「…天元に…酷いこと、言わないか心配なんだもん…」
「……は?」
突然、心配されたのは"自分のこと"。
いつだったか確かに兄君がほの花を溺愛しているということは聞いたことがあった。
だが、まさか心配の内容がそんなことだとは思わず俺はブッと吹き出してしまった。
「…む、何で笑うの!」
「ンな心配すんなって。別に俺平気だって。大事な妹に手ェ出されればそりゃ兄君達からしたら面白くないだろうよ。」
多少の嫌みなど想定内だとほの花に伝えるがそれでも納得できないのかため息を吐くばかりの彼女に俺は慰めることしかできなかった。