第40章 【番外編】不滅の想いよ、永遠に
此処からではどんな戦いが繰り広げられているのか分からない。
ただ死闘だということだけは分かる。
無惨の攻撃がこの部屋まで届いたのは驚いたが、幸いなことに軽傷で済んだのは運がよかったと言える。
残り時間が刻々と近付いている。
それまで持ち堪えられるか。
柱はもう戦闘不能になりつつあるだろう。
竈門炭治郎達が善戦しているみたいだが、大丈夫だろうか。共に戦った後輩だ。
できることならば生きて帰ってきてほしい。
竈門禰󠄀豆子が走って行ったのはおそらくそちらの方向だろう。
何故だろうか。
アイツらならばやってくれる気がした。
戦いにおいて強い奴はたくさんいる。
無惨は今となっては一強だと言える。
しかし、本当に強い奴というのは戦いの中で進化していく奴だ。
人間は土壇場で想いを力に変えられる。
それこそが人間の強みだ。
「…っ、おい、ほの花…!どうした、それ。」
ふと、ほの花を見てみると、握りしめている手からぽたりと血が流れ出ていた。
「え…?あ、…しまった。握りしめ過ぎた…。何でもない。割れちゃった破片が皮膚に突き刺さって流血しただけ。」
「いやいやいや、大丈夫じゃねぇから。手当てしろよ。此処は俺と煉獄さんがいるからよ。」
思わず血の気が引いた。
あの遊郭での戦い以降、ほの花がいなくなる悪夢を見ることがないわけではない。
突然、生きてるほの花を抱きしめたくなってしまう時すらある。
怪我などされたら心配で仕方ない。
「え、と…じゃあ…薬だけ塗るからお願いします。」
たまたま先ほどお館様達の怪我の手当てをしたばかりだったからか外に出されていた其れらを掴むと自らの手のひらに傷薬を塗り始めた。
出血が止まらないほどの大怪我ではないのは分かっているが、ほの花の鮮血に自分が慄いた。
多くの仲間が死んでいった。
煉獄
胡蝶
時透
不死川弟
そして先ほどの知らせでは悲鳴嶼さんも甘露寺も伊黒も…
そして、お館様。
でも、俺は生きている。
此処にいる生きている人間だけは最期まで守り通す。
あわよくば目の前にいる最愛の女とこれからも生きていく。