第40章 【番外編】不滅の想いよ、永遠に
──夜明けまで二十五分
それは突然訪れた強い衝撃。
鬼舞辻無惨の攻撃がこんなところまで飛んできたのか?そう考えざるを得ない。
輝利哉様のいるこの部屋にまで激しく轟いたそれに首飾りが弾け飛んだ。
突然のこと。
自分に怪我はない。
しかし、弾け飛んだそれは粉々になり辺りに砕け散っている。
あまりの衝撃に反応が遅れてしまったが、外にいた天元と煉獄さんまで入ってきたことで状況を悟った。
「っ、輝利哉様!!」
慌てて駆け寄るが、机に項垂れるように寄りかかっていた三人に心臓が大きく跳ねる。
しかし、むくりと起き上がり「大丈夫だ」と言う声に心底ホッとした。
「ほの花、私は大丈夫だ。それより小芭内と炭治郎は無事か?」
あくまで冷静に対応する輝利哉様には頭が下がる思いだ。私なんかよりもはるかに年下の彼が責務を全うしようとしている姿は胸が締め付けられる。
天元も煉獄さんも駆け寄ってきたので、私は指揮を取り続けている三人に人知れず手当を施す。
治癒能力は使えない。
邪魔にならないように血を拭き取り、傷薬を塗り込むと息を吐く。
それを終えると砕け散った首飾りのかけらを拾い集め始める。
先ほどまで暖かかったそれは冷たいただの物質と化していて役目を終えたかのように満足気に見えた。
(…お父様…お母様…お兄様…わたしたちを守って下さったの?)
鬼舞辻無惨の攻撃が此処までやって来るなんてことは想定外でもある。
でも、その衝撃でこの部屋にいた誰もが軽傷で済んだこともまた想定外のこと。
輝利哉様達が尚も鬼殺隊の指揮を取り続けているのは彼らの不屈の精神力の賜物だ。
でも、怪我が軽傷で済んだのは陰陽師の皆が此処に集結して守ってくれたと思わざるを得ない。
「ほの花、お前は大丈夫か。」
天元の言葉に大きく頷けば、煉獄さんもホッとしたような表情を向けてくれている。
(…ありがとう。きっとみんな勝つよ。お父様達の仇を討ってくれる。)
私は首飾りの破片を全て拾い上げると手のひらに収めて握りしめた。
此れは想いだ。
陰陽師の里のみんなの想いが詰まっている。
私は陰陽師一族神楽家の最後の末裔。
大した能力はなけれど、最後の最後まで陰陽師としての誇りを忘れない。