第40章 【番外編】不滅の想いよ、永遠に
「日陰に入らせるな!!押せ!!あと少しだ…!!」
固唾を飲んで見守る中、輝利哉様の目から涙がこぼれ落ちた。
外からは陽の光が注ぎ、部屋の中を明るく照らしている。
私は隣にいた天元の顔を見上げてみるが、天元の隻眼もまだ状況を悟っていないことを物語っていた。
言葉を発することも憚られる。
戦況は分からない。
でも、輝利哉様の涙が何を意味しているのかも分からない。
無意識に私は天元の腕を掴めば、その手を握り返してくれる彼に勝手に涙が溢れてきた。
もうすぐ全てが終わる。
そう確信したから。
後ろから輝利哉様を見守っていると、ふらっと体が前に倒れていくのを慌てて煉獄さんが支えた。
「お館様!!」
緊張の糸が切れたのだろうか。
その顔には安堵の表情が見て取れる。
まだ幼いながらに、父親である耀哉様を亡くされてすぐにお館様となり、鬼殺隊の指揮を取った彼の重圧は相当なものだろう。
「…ほの花!」
「うん!煉獄さん、代わります!」
私は輝利哉様を支えてくれていた煉獄さんと代わり、彼の体を診察する。
思えば、耀哉様には記憶が戻ってから最期に一目だけお会いできたがその時は薬の処方すらもう必要ないと言われてしまい、こうやって診ることもできなかった。
幸いなことに気が抜けただけのようで、体に異常は見当たらない。
「…輝利哉様、お疲れ様でした。」
「…ありがとう。ほの花。」
輝利哉様達は幸いなことに重傷の人はいない。
でも、私にはまだやることがある。
「天元…、行かないと!私、みんなのところに!!」
「…そうだな。行くか。一人でも多く助けねぇと。」
「うん!…輝利哉様、私、鬼殺隊のみんなの救護に行ってきます。」
「煉獄さん、あと頼むわ。コイツ連れて行ってくるからよ。」
四人が大きく頷いたのを確認すると私と天元はどちらかともなく手を繋いだ。
陽の光が燦々と注ぐ外へ出ると晴れ晴れとした気持ちで頬が緩む。
この景色を見たかった。
見たかった人がたくさんいた。
それは叶わなかった人もいる。
だけど繋いできた想いは永遠に受け継がれていく。
命をかけて未来を守った人たちがいたことを。
残された私たちがそれを伝えていこう。
不滅の想いよ、永遠に。