第40章 【番外編】不滅の想いよ、永遠に
天元に呼ばれて襖を開ければ、座ったままちらっとこちらを向き、手を差し出した。
其処にあったのは天元が預かってくれていた神楽家の首飾りだ。
それは赤く光り輝いているのが分かる。
初めて鬼狩りに行った時もそれは道標となり私を手助けしてくれた代物。
「家族がお前を呼んでる。持っててやれよ。」
「……うん。ありがとう。」
それを久しぶりに自らの手にすればズッシリと重く感じた。
こんなに重かっただろうか。
今、この瞬間、私は無念の死を遂げた陰陽師の里全員の想いを手にした気分になった。
その首飾りを久しぶりに首につけると天元がくれたネックレスと重なる。
天元の姿を見てしまえば抱きついたい衝動に駆られてしまう。
(…駄目駄目。今はその時じゃない。)
首飾りに手を添えて彼を見ると優しい眼差しを向けられたので、一度だけ頷くと踵を返した。
死に物狂いで戦っている仲間の無事を祈る。
私は私のできることをする。
それこそが私の道だ。
「…ほの花、あとでな。」
「うん。」
"あとで"と言うのは未来を感じさせる一言。
そう。この戦いに鬼殺隊の全滅はない。
必ず勝つからだ。
夜明けは確実に近づいている。
それは破滅への足音ではない。
明けない夜はない。
悪しき鬼のいない世界への足音だ。
私は天元に背中を向けて再び、部屋の中に入っていく。
私の一歩は古の陰陽師神楽家の一歩だ。
この血筋は私で途絶える。
神楽家は受け継がれることなくその名を終える。でも、多くの陰陽師が鬼舞辻無惨を倒すために尽力したことは忘れない。
記憶が戻ってから私は体調の良い時は珠世さんとしのぶさんと共に対鬼舞辻無惨用の毒を作ってくれている傍ら、来たるこの戦いのために傷薬や血清などを必死に作ってきた。
いま、それが使われているかと思うとそれだけでも薬師で良かったと思える。
陰陽師として満足に戦えない私の武器は薬。
どうかみんなの体の役に立てますように。
この戦いの行く先が勝利への道と続いていますように。
私は受け取った首飾りを握りしめると再び輝利哉様達の後ろに座り、戦いの様子を固唾を飲んで見守った。