第40章 【番外編】不滅の想いよ、永遠に
その時だった。
──バキッ
大きな音を立てて扉が破られた音がした。
音がした方に視線を向けると人影が二つ見える。
あれは…
「あ?!竈門禰󠄀豆子!どこ行ってんだ!!」
遠くに見えるのは走り去っていく禰󠄀豆子とそれを追いかける鱗滝の姿。
一体どういうことなのだ。
珠世という鬼が作った人間に戻る薬を飲んだ筈ではなかったのか。
万が一、人間に戻った状態で戦地に向かおうとしているならばそれほど無謀なことはない。
「お館様!!鬼の娘が飛び出しました‼︎如何致しますか?!」
煉獄さんがそうお館様に問うが、襖の向こうからはすぐに返事は来ない。
俺と煉獄さんは言葉を待つために顔を見合わせて、その場に止まる。
暫くして、落ち着いた声色で呟かれたのは「追わなくていい」という一言。
次いで聴こえて来たのは「父上が好きにさせろと言っているんだ」という言葉。
ふと空を見上げると満天の星空。
一際輝く星を見つければ其処に前のお館様が重なって見える。
(…見守って下さってるんですね。我々の行く末を)
俺は再び前を向き、冷静にその場に留まった。
隣を見れば煉獄さんが小さく頷き同じように前を見据えた。
輝利哉様もまたお父上である前お館様の声が聴こえたのであろう。
其処まで考えると俺は少しだけ口角を上げた。
この戦いは勝つと確信に変わったような気がしたからだ。
お館様の遺志は全員に受け継がれている。
此処に結集しているのは今まで死んでいった鬼狩りや無念にも鬼に殺された者たちの魂。
懐に温かさを感じて手を突っ込むと取り出した其れはほの花の首飾り。
神楽家の形見だ。
竈門禰󠄀豆子が太陽を克服したことで命の心配はなくなったにせよ、これをつけていることで神楽家の生き残りだと分かってしまうため、俺が預かっていた。
取り出して見ると、赤く光り始めたそれもまた故人の想いを感じさせた。
「…ほの花。出てこられるか。」
部屋の中にいるほの花にそう声をかければ、ゆっくりと襖が開け放たれる。
その瞳は赤く腫れ上がっているが、強い意志を宿している。
そんなほの花を見て、己の手の中にあるそれを彼女に手渡した。