第40章 【番外編】不滅の想いよ、永遠に
それでも容赦なく命を奪っていく鬼に私は拳を握りしめて体が震えた。
何故?どうして?
何で命を奪うの。
──上弦ノ壱トノ戦闘の末、霞柱時透無一郎死亡ーーーッ‼︎不死川玄弥死亡ーーーッ!!
"ほの花姉さん!!また来たよ!!"
私があの戦闘以来体調がなかなか元に戻らない中、無一郎くんは何度も屋敷に遊びに来てくれた。柱稽古が終わった後、一緒に食事をしてから帰ったりすることも多かった。
宇髄さんともよく話していたけど、私の話相手にきてくれていたんだと思う。
本当の弟のように想っていた。
大切な弟。
玄弥だって不死川さんの大切な弟。
心臓が煩い。
私なんて大した役に立たない。
この場に無惨がいたとしても傷ひとつ付けられないと思う。
私の稀血のことなんて知り得ている無惨が血を流させずに殺すことなんて造作も無いこと。
私に出来ることなんてない。
だからこそ悔しい。
悔しくてたまらない。
(…頑張った、ね…!無一郎くん…。)
心の中で彼の死闘を称賛しなければ心がおかしくなりそうだった。
彼がいなければ上弦の壱は倒せなかった。
そう考えれば見事な生き様だった。
若いのに…いや、若いとか関係ない。
一人の人間として立派だった。
彼は誇るべき愛する弟だ。
(産屋敷様…、そちらに着きましたら私の分まで褒めてあげてください。お願いします。)
涙が溢れないように天井を見上げて溜まった唾液を何度も何度も嚥下する。
喉は恐ろしいほどに震えて、奥歯がカチカチと煩い。
うまく息が吸えなくて息苦しくなってきた時、襖の外から穏やかな声が聴こえてきた。
「…ほの花。大丈夫だ。」
その声に私は何時間ぶりかと思うほどの酸素を勢いよく吸い込んだ気がした。
肩で息をしながらその影を見つめると心臓の鼓動が落ち着いていく。
(…天元…。)
彼は私の精神安定剤のよう。
暖かくて優しい声がそばにいてくれるだけで呼吸すら楽になる。
「…うん。そうだね。大丈夫…だよね。」
小さな声でも天元になら聴こえる。
私はその場でそう呟くと大きく深呼吸をして再び輝利哉様たちの後ろ姿を見つめた。