第40章 【番外編】不滅の想いよ、永遠に
ほの花の心臓の音が聴こえてくる。
次いで鼻を啜る音も。
慕っていた胡蝶の死亡が伝えられたのだ。
俺とて胸が締め付けられるほどの悲しみはある。特に蝶屋敷に頻繁に出入りしていたほの花の悲しみは想像を絶する。
それでも大きく息を吐き、それを整えようとしているのが音だけでも伝わってくる。
必ず勝つ。
そうしたらこの手で抱き締めてやる。
涙が枯れるまで。
それにしても…
「輝利哉様はご立派なことだ。父を亡くされた心痛の中、鬼殺隊の指揮を取り、己の使命を果たさんとしておられる。なぁ、煉獄さんよ。」
前を向いたまま隣に鎮座している煉獄さんに声をかける。
ほの花もまた輝利哉様達の姿を見て己の悲しみを律したのであろう。
いつものほの花ならば泣きじゃくっている。
俺の言葉に深く頷いた煉獄さんは同じく前を向いたままに口を開いた。
「……そうだな。年端もゆかぬ子どもたちがこれほど我が身を奮い立てているのだ。」
子どもながらに前お館様は自分の死期を悟り厳しく育ててきたことだろう。甘えることなど出来なかったのかもしれない。
だからこそ今日で終わりにしたい。
悲しみの連鎖は此処で断ち切る。
全員の目的は一緒だ。
煉獄さんは少し下を向くと尚も言葉を続けた。
「私も杏寿郎同様煉獄家に恥じぬよう命を賭してお守りする。」
「…そうだな。俺もその覚悟だ。」
「折角あの子と元鞘に戻ったのに悔いは残らないのか?」
「どちらにせよ…俺たちが此処で死ぬことがありゃほの花と一緒に逝くことになるだろ?アイツもその覚悟で付いてきたんだ。」
いくら止めても首を縦に振らなかった。
もう一人になりたくないと頑なに俺の体に抱きついて離れないほの花。
死なせたくないという想いはもちろんある。
だけど離れたくないというらほの花の気持ちもわからなくはなかった。
死ぬならば共に逝きたいという彼女の気持ちは俺の気持ちでもあった。
「俺だけ死んで、アイツに手を出す男を全員呪い殺すことを考えたらよっぽど健全だろ?」
「…………お前はほの花より後に死ね。」
若干顔を引き攣らせる煉獄さんだが、俺たちは"二人で一つ"。
お互いの代わりなどいないのだ。