第40章 【番外編】不滅の想いよ、永遠に
──死亡!死亡‼︎胡蝶シノブ死亡ーー!上弦ノ弐トノ格闘ノ末死亡ーーーーッ‼︎ ──
何か悪い夢でも見ているの?
呼吸が震える。
手も震える。
怒りと悲しみと苦しみと何が何だか分からない。
天元に無理を言って付いてきたけど、あまりに凄惨な現場に涙すら流すことを憚られた。
そもそも私に涙を流す時間はない。
必死になって戦っている人たちを弔うのは、死を悲しむのは後だ。
目の前にいるお館様は必死に次の一手を考えている。泣くのは間違っている。
震える喉で必死に溜まった唾液を嚥下すると拳を握りしめた。
(…しのぶさん…。)
この戦いに医療班として参戦したいと申し出た時に宇髄さんと最後まで止めてくれた。
確かにそれは合っていたと言わざるを得ない。
分かっていたが、分かっていなかったのだ。
煉獄さんの死を目の当たりにしても、上弦の鬼を次々と撃破していった鬼殺隊に夢を見ていたのだ。
"誰も死なずに鬼舞辻無惨に勝てることを"
しかし、そんなのは夢物語だと今分かった。
優しい笑顔が脳裏に浮かぶと涙が再び溜まってくるのを首を振ることで散らす。
「炭治郎達は?」
「上弦の参と戦闘を開始した模様です。」
そうだ。
まだ戦いは終わっていない。
みんな頑張ってるんだ。
私だって最後までちゃんと此処で輝利哉様達を守らなければ。
溢れてきた涙を拭いながら、必死に職務を全うしようとしている三人の後ろで私は舞扇を持ち直して見据える。
私よりも遥かに幼いこの子たちが必死に闘っている。
産屋敷様…。
耀哉様、あまね様、お姉さまたちを亡くしても尚、気丈に振る舞うその姿に口を真一文字に引きしめる。
大丈夫。
きっと大丈夫だよ。
ふと外に通じる襖を見れば天元の影が見える。
それを視界に入れるだけでホッと胸を撫で下ろせる。精神安定剤のようだとも感じる彼の存在は私の背中を押してくれる。
「…大丈夫…。きっとみんなが倒してくれる…。しのぶさん。お疲れ様でした。」
私の呟いた一言で外にいた天元の口角が上がったことは知らない。
どこにいても想いは一つ。
鬼舞辻無惨を倒したいという共通の目的。
その想いこそ不滅。