第40章 【番外編】不滅の想いよ、永遠に
万が一、今のお館様のいるところまで鬼舞辻無惨の手が伸び、襲撃されるようなことがあれば全滅も余儀なくされるだろう。
俺は引退した身で前ほど戦えるわけではないし、共に護衛の任に就く元炎柱の煉獄さんも同じく。
ほの花とてそれは分かっている。
それでも来たがった理由は…
「…もう一人になりたくない。死ぬ時は一緒だよ。」
お互い記憶がなかったりして恋人期間が長らくお預けとなっていた俺たち。
この戦いでどちらかだけが死ぬだなんてことがあれば廃人と化するのではないかと思う。
それは最早死んだも同然。
ほの花に生きていて欲しいと思う一方で、その気持ちも分からなくはない俺は彼女の申し出に頷くことしかできなかった。
「言っておくけどよ、外は寒ぃし、俺と煉獄さんがいりゃあ良いんだからよ。お前は中でお館様の近くで待機しておけ。いいな?」
「え?!たくさん着込んできたのに…!」
「たくさん着込んでも熱出す時ゃ出すじゃねぇかよ。言うこと聞けねぇなら家に連れ帰るぜ。」
"連れ帰る"と言う言葉にビクッと身を硬くすればぶんぶんと首を振り大人しく俺の首に掴まるほの花。
どうやら帰るのだけは嫌らしい。
「…分かった。新しいお館様を中で守るよ。」
「ん。そうしてくれ。ま、そう心配はいらねぇって。」
「え?何で?」
「俺たちの仲間はド派手に強ぇからな。俺らの出番なんてねぇよ。」
何年も共に戦ってきた柱仲間の実力は信じている。
遊郭で共に戦った竈門炭治郎達のことも信じている。
柱稽古をしてやった隊士達も信じている。
俺たちの出番はない。
だが、万が一のために待機するだけの話だ。
腕の中でこちらを見るほの花の瞳は驚いたような顔をしながらも目尻を下げた。
「…そうだね。…そうだった。みんななら大丈夫だよね。」
「ああ。必ず鬼舞辻無惨をド派手に倒してくれるさ。」
長きにわたって続いていた鬼と鬼殺隊の戦い。
それは陰陽師の末裔である神楽家との戦いでもある。
散っていった命は計り知れず。
それでも前を向いて生きてきた。
全てはこの日のために。
俺はほの花を抱え直すと約束の場所へと急いだ。