第39章 陽だまりの先へ(終)※
抱きしめていた腕を緩めると懐からあるものを取り出した。
それはずっとずっと渡せなかったもの。
「預かってた。お前のモンだろ?」
「あ…!ありがとう…。天元が持っててくれたんだね。」
それは俺が前にほの花にあげた花飾りと耳飾りとあの花火大会の射的の景品だった玩具の指輪。
手のひらに其れを置き、目の前に持って行ってやると嬉しそうに受け取ってくれる。
「あ…これも、ありがとう。すっごく気に入ってる!」
胸元で新たに主張しているのは記憶がないほの花と町に出かけた際に買ってやったネックレス。
やっと全てがほの花の手元に揃ったことが嬉しくてたまらなかった。
「さ、帰るか。お前、こんなに全力疾走して明日、また発熱するぞ。ったく、記憶戻った瞬間逃げるか、普通。ド派手に不満だぜ。」
「ご、ごめんって…、と、咄嗟に…!」
「しかも、記憶が戻ったきっかけがまた吐き気かよ。」
「今回は吐かなかった!!」
"どうだ、凄いだろ!"みたいな顔で得意げになってるほの花に笑いが込み上げる。
生きているから笑い合える。
生きているから愛しあえる。
俺はほの花の手を取ると家までの道を共に歩いていく。
「はいはい。偉い偉い。ほら、アイツらも待ってるから帰るぞ。」
「うん…、私も…会いたい。」
青天の霹靂
まさに突然、予想だにせずに記憶が戻ったほの花は少しずつ三ヶ月の失われた時を取り戻していった。
周りの人間は一様に再会を喜び、ほの花に「おかえり」と言う。
もちろん記憶は戻ってもほの花の体に残った負債は消えない。
少しずつ良くなっているが、前みたいに戦うことは出来なくなった。
それでも前向きに生きようと二人で手を取り合う。
ほの花が戦えないならば俺が守ればいい。
ほの花が体調を崩しやすいなら俺が看病してやればいい。
ほの花が悲しい時は俺が全力で抱きしめよう。
そのために俺には腕が二本もあるのだから。
愛する女が取り戻してくれたそれを愛する女を守るために生涯大切にすることが俺の今後の責務なのだ。
そして…
月日は流れた。