第39章 陽だまりの先へ(終)※
第一声はやっぱり謝罪の言葉。
それがあまりにほの花らしくて思わず笑いが出た。
泣いてるほの花を見てもただ愛おしいとしか思えない。
前から抱き締めてやると遠慮がちに背中に手を回してくれる。
「ほの花、お前の居場所は此処だろ?」
「……う、ん。」
「だから帰ってきたんだろ?」
「う、ん…。」
記憶なんて消さなくて良かった。
そう思ってる。だけど、それがあったからこの数ヶ月間でお前のことを知ることができた。
全ての始まりは其処。
「この腕も治してくれてありがとな。おかげでこうやってまたほの花を両手で抱きしめられる。」
「…っ、…」
「お前が体調悪くても両手で抱えられる。」
「ひ、…っく、…!」
「子どもができたら片手でほの花、もう片方で子どもと手を繋げる。」
「……っ、う、ん…!」
全部、全部…繋がっている。
自分達の未来に。
無駄なんてことはない。それだけ俺の命を大切だと思ってくれていたと言うこと。
其処に邪な気持ちは一切ない。それがほの花だ。
「この両手はお前の愛を全身全霊で受け止めるためにあるんだからよ。何でも言え。何でも頼れ。そして甘えろ。」
言葉だけでは伝わらないかもしれない。それでも言う。言わなければもっと伝わらない。
「生きててくれてありがとな。俺はそれで救われた。だからこれから先のお前の人生は俺が受け持つ。」
愛し合っていたのにずっとずっと辿り着けなかった約束の場所。
もう離さない。
俺はお前と生涯を共にしたい。
「神楽ほの花さん、俺と…結婚して下さい。」
何度でも言おう。
此処で
あの時言ったその言葉。
言葉は言霊。
言えば叶う。
だから言わなければ叶わない。
さまざまな障害があって辿り着けなかった其処も今ならば行ける。
だから何度だって言おう。
お前の中に巣食う遠慮の鬼ごと俺が全て受け持ってやる。
俺は鬼殺隊音柱 宇髄天元だ。
引退しても愛おしい女のためならば最期まで刀を振り続けよう。
二人の未来のために。
結局、堰き止めていた涙は溢れてきてしまい、ほの花の頬を濡らしていく。それは恵みの雨の如く俺たちの離れていた時間を埋めていくよう。
優しい時間が流れていった