第39章 陽だまりの先へ(終)※
鍛錬が定刻通りに終えると、宇髄さんは約束通り甘味処に連れて行ってくれた。
二人でお出かけするのは詩乃さんと出会った日以来。
何気ない日常が幸せで歩いているだけで顔がにやけてしまった。
──ふたば屋
「わぁーー!美味しそう!!」
「好きなだけ食えよ。」
「うん!ありがとう〜!!」
好きなだけ食えと言われれば、あれもこれもと食べたくなってきてしまう。
食事の内容も既に普通食になってから日が経っているし、甘味を食べるのは念願のこと。
私の甘味好きは宇髄さんも知っているようだし、宇髄さんも忙しいし頻繁に来れるわけでもないから此処ぞとばかりに食べてしまおうと目論む私。
豆大福は鉄板だし、おはぎも食べたい。
甘味処といえばあんみつも捨てがたいし、みたらし団子もいい。
寒い日だからお汁粉も良いだろう。
お品書きと睨めっこをしながら、一人で唸っていると宇髄さんが頭をポンと撫でてくれた。
「食える分ならいくら頼んでもかまわねぇから今考えてるモン全部頼めよ。」
「え!い、いいの?」
「ああ、まぁ食えんかったら俺が食ってやるしよ。」
そう言ってくれる宇髄さんに御礼を言うと、食べたかったものを全て注文した。
此処のお店の人は私と宇髄さんが二人でくるのは珍しくないのか皆一様に声をかけてくれる。
記憶がないことと数ヶ月期間が空いてしまったことも宇髄さんがそれとなく誤魔化してくれた。
それでも此処は前の私との思い出の地なのだと感じると胸がほかほかと温かくなった。
(…一緒に来たかったでしょ?ふふ。)
そう声をかけるのは心の中にいる過去の私。
きっと聴こえている気がしたから。
だって食べたこともないのにここの甘味の味が何故か思い浮かぶのは"私"が何度も此処を訪れていて、此処の甘味が大好きだったから。
過去の私に食べさせてあげたいと言う気持ちでたくさん頼んだけど、私は今の自分の状態をちゃんと理解できていなかったとこの後後悔することになった。