第39章 陽だまりの先へ(終)※
「まぁな〜…でもよ、俺はお前がいてくれたらいいからよ。あんまり考えすぎんなよ。」
「うん!分かってるよ。前の私に遠慮してるとかじゃないの。ただ宇髄さんのことを好きになればなるほど前の私の気持ちが分かってくるから。」
宇髄さんは今の私を愛してくれている。
もちろん前の私も愛してくれている。
それのどちらもほの花だろ?って言ってくれるから。
だから私もそれを受け入れて、彼の愛にどっぷり浸かってしまっている。
ただ彼のことを日に日に好きになって行くと思うことがある。
"記憶がある私も宇髄さんに早く会いたいだろうな"って。
目を覚ましてからたくさんの人に支えられてきた。宇髄さんはもちろんのこと、ここに住んでいる正宗達や雛鶴さん達。瑠璃さん。
体のことを診てくれている胡蝶さんや仲良くしてくれているカナヲちゃんやアオイちゃん。
炭治郎くんたち。
みんなが記憶のない私をたくさんたくさん大切にしてくれて、愛してくれたから。
そして記憶のない私に過去のことを教えてくれて、最初は自分のしたことが恥ずかしくて悩んで悲観した。
それでも過去の過ちごと私を受け入れてくれているんだと知れば知るほど、記憶のある私にそんな景色を見せてあげたいと思うようになった。
それによって今の私が消えるわけではない。
ただ今の私ですらこんなに宇髄さんのことが大好きで、隣にいるだけでドキドキするのに、前の私であれば会いたくて会いたくてたまらないんではないかと思うようになった。
誰もが"私たち"を受け入れてくれている。
そこに蟠りはない。
宇髄さんに抱かれた翌朝、目が覚めたとき、ひょっとして記憶が戻ってるかなとも思ったけど、私の記憶は戻っていなかった。
そこにいたのは"今の私"だけ。
隣で心配そうな顔を浮かべている宇髄さんに笑顔を返す。
「だから今は宇髄さんに早く会わせてあげたいなって思ったんだ。遠慮してるわけじゃない。」
宇髄さんと体も心も一つになれて気づいたの。
私も過去の私も二人で一つなんだって。
だから私は私を取り戻したいって素直に思えた。