第39章 陽だまりの先へ(終)※
冬は寒い。
特に朝の冷え込みは堪える。
凍てつく空気に少しでも布団から足が出ていようものならばカチカチに悴んでしまっていることだろう。
それなのに今日は湯たんぽにでも包まれているのだろうかと思うほど温かい。
寒さ故、一度微睡から抜け出せばもう一度堕ちるのは至難の業。
それなのに今日は何故少し意識が浮上したのか分からない。
でも、その温かさのせいで再び微睡みに堕ちそうだった。
温かい湯たんぽに顔を擦り付けると、頭を誰かに撫でられた。
(…誰…?あー…宇髄さん、かな…)
きっとそうだ。
この匂いは宇髄さん。
頭に感じた大きな手のひらも宇髄さんだ。
安心して再び微睡に意識を手放そうとしていたのに、ふとあることに気づいてしまった。
擦り付ける湯たんぽが何故か人肌のような弾力があったことに。
確認のため薄っすらと目を開ければそこに飛び込んできたのは、間違いなく人の体。
「っっひ、ぇっ!!!」
朝起きたてほやほやで人の体が目の前にあることの衝撃たるや想像を絶する。
宇髄さんだと分かっていても驚いて体を仰反らせると布団の隙間から冷気が入ってきて身を縮こませた。
「…おいおい、まだ陽も昇ってねぇんだから寝てろ。」
寝起きで掠れた声が妙に色っぽくてドキドキしてしまうけど、グイッと腕を引っ張られて彼の胸の中に閉じ込められたことで自分達が何も身につけていないことに気付く。
(あ…、そうだった…、昨日…)
記憶を手繰り寄せてみれば、珠世さんと言う人に会った後、宇髄さんに抱かれたことに簡単に行き着き顔が熱くなる。
その上、広い胸に抱き寄せられるとそれだけで彼に愛されていることを実感できて頬が緩んでしまうのだ。
寝ろと言われても既に意識は覚醒してしまい、昨日のことを思い出してどうしようもない高揚感で目は開眼してしまっている。
しかしながら、宇髄さんはまだ眠いだろうし…と無理矢理目を閉じたところで今度は彼が勢いよく私の体を離した。
「…?!…どう、したの?」
「…ほの花、悪ぃ。ちょっと待ってろ。」
宇髄さんは私にそう言うと寒さをものともせずに布団から出ると夜着を身につけて部屋の外に出て行ってしまった。
急に一人にされた布団の中は寒い筈なのに体はポカポカと火照っていた。