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陽だまりの先へ【鬼滅の刃/音夢💎】R指定有

第39章 陽だまりの先へ(終)※






それは柱稽古が終わった夜のこと。
昼間は賑わっていた庭も人の声どころか虫の声も聞こえない静かな空間。

時刻は0時を過ぎていたのだが、私は何故か急に目が覚めたのだ。
ふと吸い寄せられるように襖を開けると月明かりが降り注ぐ庭に一匹の猫がいた。


その猫が「にゃおん」と言うと「ついてこい」と言われている気がした。
こんな真夜中に外に出ることなんて此処にきてからは初めてのこと。
最初はニコッと笑いかけてその場で猫を見つめていたが、こちらを何度も振り返り「にゃおん」と何度も呼んでいるように感じた私は、仕方なく羽織を着て、履物を履いてその猫の後を追いかけた。


「おーい…どこ行くのー?」


あまり遠くには行けない。
宇髄さんに見つかったら心配かけてしまうと思案したが、外には出て行かずに猫は庭の奥へと突き進み、木が生い茂る温室の死角の部分まで歩いて行った。


そこで立ち止まると再び「にゃおん」とこちらを見た。ひょっとして仲間の猫が何かに引っかかっているのだろうか?と其処を見遣れば「こんばんは」と声をかけて来た人物に驚いて背筋が凍った。


「っ!?!」


「お久しぶりです。ほの花さん。」


誰だろうか?綺麗な女性がこちらを見て笑いかけている。
隣にいる目つきの悪い男性は私が返事もできずに狼狽えていることに「おい!返事くらいしろよな!」と辛辣な言葉を投げつけてきた。


"お久しぶりです"と言うことはこの人達と私は会っていると言うことだ。
でも、その空気がどうも違和感を感じた。
人間でないような…浮世離れした空気感。

それが何なのかわからずに二人を見つめることで精一杯だった私の代わりに言葉を発したのはいつのまにか背後にいた大好きな人だった。


「其処までだ。鬼畜生めが、俺の女に何の用だ。言っておくが、手を出したらすぐに頚を斬る。」


そう言って突き付けているのは見たことのあるような、無いような…大きな刀だった。
腰に感じるのは彼の手の感触。温度。


そして、目の前にいる人たちを"鬼畜生"と呼んだと言うことは、この人たちは"鬼"だと言うこと。


しかし、宇髄さんが来るのを分かっていたかのように静かにこちらを見て、穏やかに微笑むその女性に私は目を離せなかった。

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