第39章 陽だまりの先へ(終)※
「炭治郎くんは?一緒じゃないの?」
「あー…うん、実はね…」
善逸くんの話によると、炭治郎くんはまた上弦の鬼と戦ったことで怪我をして胡蝶さんのところに入院しているらしい。
刀鍛冶の里というところらしい。
ただ詳しく聞かないまま帰ってしまったが、瑠璃さんがいま住んでいるところが鬼に襲われたと言っていた。刀鍛冶の人と一緒に住んでいるとも聞いているので、きっと其処のことなのだろう。
あの時、宇髄さんは瑠璃さんの想い人の無事は伝えていたけど、"上弦の鬼"と言うのはとても強いと聞く。宇髄さんだって私が治したとはいえ、左腕を切断される大怪我を負ったらしい。
左目は失ったままだ。
「…そうなんだ…!炭治郎くんの怪我の状態は?知らなかったよ…。お見舞いに行きたいなぁ…」
「あ、いや!もうすぐ退院だからさ、その内此処に来るよ!だからそうしたら会えるんじゃないかな。」
それを聞いてホッとした。怪我をしたのは間違いなくとも大怪我ではなかったのだろう。
善逸くんとの会話を楽しんでいるといつの間にか音もなく、目の前に影ができた。
「おーおーおー…善逸は俺の女と何喋ってんだぁ?まさかまた口説いてんじゃねぇだろうなぁ?」
「メ、メ、メ、滅相モゴザイマセン!!!ア!ハ、走ッテキマスーーーーーーー!!」
私が言葉を発する間も無く善逸くんは脱兎の如く逃げ出して、忽然と隣は空席になった。
そこに不満げな顔をして宇髄さんが腰掛けると私の顔をじぃっと見つめる。
「…お前、男に隙見せんなよな。」
「え…?隙?」
「此処でニコニコしながら稽古見つめやがってよぉ!何人の糞どもがお前に頬を赤らめてたか!ふざけんなよ!お前は俺のだろうが!」
突然の怒りの叱責に目を瞬かせて宇髄さんを見つめるしかできないでいる。
でも、耳は真っ赤にさせてそっぽを向いてしまった宇髄さんに「やきもち妬いてくれたんだ」と言うことだけが分かって口元を緩むのを抑えられなかった。
「うん。私は宇髄さんのだよ。明日からお面でも被っておく?須磨さんに貸してもらおうかな。」
「…それはそれで別の意味で力が抜けるからやめてくれ…」
少しずつ、少しずつ…恋人関係を取り戻していく。それは前の私とではないけど、私は私。
あなたの恋人のほの花に変わりないのだから。