第39章 陽だまりの先へ(終)※
翌日から予定通り、柱稽古というものが始まって、宇髄邸にはたくさんの鬼殺隊士が集まってきていた。
見たことない人ばかりなのに顔を見れば「あ!神楽さんこんにちは〜!」と声をかけてくれる人もいて、私がそこにいた形跡が其処彼処に散らばっていて不思議な気持ちになった。
しかし、"継子"だったという私は本来ならば彼の手伝いをしなければならないだろうに、今の私はそんなことをすることはできない。
縁側の見える暖かいところに膝掛けをかけて、何重にも羽織を着せられて座っているだけなのは体のことを考えればつまらないが仕方ないとも言える。
今回、行われるのは"柱稽古"
柱より下の階級の者が柱を順番に巡り、稽古をつけてもらえるらしい。
そして宇髄さんが第一の試練として担当するのは所謂基礎体力を向上させるための"しごき"だった。
「遅い遅い遅い遅い!!何してんの、お前ら。意味わかんねぇんだけど!」
竹刀を持った宇髄さんが鬼殺隊士の皆さんに向かって檄を飛ばす姿は見慣れないが、真剣なその表情を見るとトクンとこの場に相応しくないトキメキも感じてしまう。
「まず基礎体力がなさすぎるわ!!走るとかいう単純な動きがさ、こんなに遅かったら上弦に勝つなんて夢のまた夢よ?」
そんな宇髄さんの地獄のしごきによって地面を舐めるように項垂れる隊士たちを何度も鼓舞してしごきあげていくのだ。
上弦の鬼と言うのがどれほどのものなのかはわからないが、彼の失われた目を見れば一目瞭然でもある。
基礎体力の向上を目的としているならば是非とも参加したいと思ってしまうが、今の私が参加したら数分でぶっ倒れること間違いなしだ。
自分の役目は此処で救護をすることだけ。
空を見上げながら宇髄さんのしごきの声を聴いていると、一足先に休憩に入っていた隊士の子が一人声をかけてくれた。
「ほの花!」
それは黄色頭の男の子。年は…炭治郎くんと同じくらいだろうか。真っ直ぐにこちらをみるその子は優しい笑顔を向けてくれていた。
「あ…えと…」
「あ、突然ごめんね…!俺、我妻善逸!炭治郎からほの花のこと聞いてさ!記憶がないんだって…?」
"善逸"と聴いて思い出すのは炭治郎くんとの会話。宇髄さんと上弦の鬼と戦って尽力した一人だ。