第39章 陽だまりの先へ(終)※
そんな宇髄さんに私は何ができる?
ほんの少しの勇気を持つだけで彼を幸せに出来るならば怖がることなんてないのではないか?
だって自分の欲を抑えて、私の心を大切にしてくれる人が、私を怖がらせるようなことをするわけがないじゃないか。
何を怖がっているのだ。
宇髄さんは自分が思っているよりもずっとずっと私のことを愛してくれている。
それをまきをさんも言葉で伝えてくれている。
違う。
本当は分かってるんだ。
私が怖いのはそんなことじゃないでしょ?
怖いのは…
怖いのは…
「…し、シてみて…前の…私のが良かったって、思われたら…どうしよう…」
言葉にしてみるとツンと鼻の奥が痛む。
そうだ。私が怖かったのは前の自分を超えられる自信がないから。
初めてのことだから宇髄さんを満足させられないかもしれない。
宇髄さんは"私"と何度もシたことあるのにまた精神だけ生娘の私を抱くことになってしまって、ガッカリさせることが怖いんだ。
「……はぁ?」
「だ、だって…!今の私は…生娘だし、いろいろ分からないでしょ…?め、面倒臭いって思われるんじゃ…」
「思われるわけないじゃん。」
「分かんないことだらけで満足させられないかもしれない…!」
次々と溢れ出すのは不安の言葉。
宇髄さんのことを知れば知るほど好きになる。
私はこんなに好きになっていくのに、宇髄さんは私がいろんなことを覚えていないから知れば知るほど嫌になるのではないか?
そんな不安と心配が頭から離れない。
すると、はぁ…とため息を吐いたまきをさんが呆れたように私に問う。
「ほの花さんは"誰に"抱かれるつもりなの?」
「……え…?」
「天元様でしょ?ほの花さんの"恋人"の。満足させるとかって物理的なことよりも大事なことがあるじゃん。」
「大事なこと…?」
「お互いが想い合っているってこと!!まぐわいなんてお互いのことを愛していればそれだけで気持ちいいものなの!ほの花さんにいま必要なのは天元様の気持ちと"今の"自分の気持ちを大切にすること!分かった?!」
──大切な人を大切にする勇気を持ってくださいね
その瞬間、脳裏をよぎったのは詩乃さんの言葉。
そしてこぼれ落ちた涙が膝に落ちた。