第39章 陽だまりの先へ(終)※
そうは言っても、私は宇髄さんのことは好きだ。
彼が隣にいると安心するし、顔が見えないと不安になる。
隣にいても目が合わないと悲しくなってしまうし、距離感を埋めたいと感じても宇髄さんとの距離はなかなか縮まらない。
「ほの花、早めに寝て体調整えておけよ。熱は下がったな?」
「あ、うん。今朝には下がってたよ。」
「それなら今日は風呂入ったら温かくしてすぐに寝ろよ。」
そう言って頭を撫でてくれて部屋を出て行く宇髄さんの後ろ姿をただ見つめることしかできずにため息を吐くと、まきをさんが声をかけてくれた。
「ほの花さん、どうかしたの?」
須磨さんだけでなく雛鶴さんともまきをさんとも今朝方、敬語はなしでということになって、まるで友達のような会話ができることが嬉しい。
きっと前の私もそれを望んでいたことだと思う。
「あ、いや…うーんと…。」
「ははーーん!恋のお悩みね?!今日はちょうど私と一緒にお風呂だし、じっくり聞くよ!」
「あはは…、ありがとう。」
こんなことは贅沢な悩みと言われてしまうかもしれない。好きな人と通じ合えて、恋人関係になっているのにまぐわいが怖くて宇髄さんに我慢してもらってるなんて…。
でも、悶々と一人で考えるよりもまきをさんに聞いてもらった方がいいかもしれないと思い、私は手を引かれるがまま風呂場に向かった。
一人でお風呂に入るのは危ないからと言って、まきをさん達が交代で一緒に入ってくれているのだが、最初は申し訳ないと思っていたのに、いつのまにかそれが楽しみになっていた。
「でー?天元様と何があったの?」
脱衣所で着物を脱ぎ、小さな椅子に座らされると後ろからお湯をかけながらまきをさんが矢継ぎ早に核心をついてきた。
「何で…宇髄さんとのことだって思うの?凄いね。」
「だってほの花さんの目が天元様ばかり追ってたもん。」
「……うそ…、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど…!?」
無意識の行動とは言え、宇髄さんを目で追っていたなんてことが周りにもバレていることに羞恥心で顔を引き攣らせた。