第39章 陽だまりの先へ(終)※
「そうは言ってもよォ、もう其処まで昇格してんならほの花にそう言ってみればいいじゃねぇかよ。」
「昨日、それっぽいこと言ったら怯えた顔された。」
「….…あー….…。まぁ、そう言うこともあるよな。」
こちらを見て哀れみの視線を向けてくる不死川に眉間に皺を寄せるが、コイツに言ったところで問題は解決しないことも分かっているのだ。
昨日、いきなりあんな口づけをしてしまったから怖がらせてしまったのだろう。
あんなにも大切にゆっくりゆっくり距離を近づいていたと言うのに、思わぬ誤算だった。
嫉妬してくれたほの花が嬉しくて止まらなかったのだ。
「…はぁ…、マジで俺…我慢できっかな…」
「でしたら、先ほどの大絶叫も我慢して欲しかったものですねぇ?宇髄さん。」
「げっ!!こ、胡蝶…。」
突然、背後から声がしたかと思うと米神をピクピクと痙攣させながら怒りに震えている胡蝶の姿に俺は戦々恐々とした。
咄嗟に不死川を見れば、既に其処にはいない。
(アイツ…自分だけ逃げやがったなぁ?!)
狼狽えながらも何とかご機嫌を取ろうと笑顔を作ってみせるが胡蝶の目は全く笑っていない。
「ほの花さんへの愛はご自身のお家で叫ばれて下さいね?」
「は、ハイ…スミマセン。」
「今日はお館様からの伝言を伝えるためにお呼びだてしました。」
「お館様の伝言?」
その瞬間、少しだけ嫌な予感がした。
伝言を伝えるのであれば胡蝶伝いでなくとも、呼び出してくれたらいいものを。
それは要するに先日会った時よりもさらに体調が悪化しているということではないか?
言い知れぬ不安に襲われたが、胡蝶が話してくれたその伝言の内容に俺は目を見開いた。
それはあの日、俺が提案した内容そのものだったから。
「宇髄さん。後輩の育成のために柱稽古というのを行うので第一の試練をお願いしたいとのことです。よろしくお願いしますね。」
お館様はまだご存命でいらっしゃるようだが、それを人伝いで伝えてくるということは…そういうことだ。
俺は二つ返事でそれを了承して、屋敷の住人にそれを報告することにした。