第39章 陽だまりの先へ(終)※
ほの花が熱を出した翌日、俺は久しぶりに蝶屋敷に呼ばれていた。
柱を辞めてからというもの、ほの花を定期検診で連れて行く以外に此処を訪れることはめっきり減った。
「お、宇髄じゃねぇかァ。元気そうだなァ?」
「元気そうに見えるか。そうか、そりゃよかった。」
「……何だよ、何かあったんかァ?」
蝶屋敷に着くや否や、声をかけてきたのは風柱である不死川だ。
俺の顔を見るなり元気そうだと言ってくるが、朝から何度ため息を吐いたと思っていやがる。
そんなこと不死川に言ったところで知らぬ存ぜぬと言うものだが、こちとら欲求不満で死にそうなのだ。
昨日、嫉妬してくれたほの花があまりに可愛くて情交前のような熱い口づけをしてしまってからと言うもの、止まっていたタガがはずれたかのようにほの花を抱きたくて仕方なくなってしまった。
顔を見れば、触れたい、口付けたい、ぶちこみた(自主規制)
だが、肝心のほの花はと言うと、記憶は戻っていないし、何なら要するに心は"生娘"だ。
何度俺に抱かれたと思ってるんだと今のほの花に行ったところでそんなことは露知らず。
それこそ"知らぬ存ぜぬ"だ。
自ずと顔を合わせにくくなってしまって、今日は朝からほの花とあまり会っていない。
そのかわり、昨日から須磨と打ち解けたことで心太式に雛鶴、まきをとも仲良くなっていて、いつの間にか朝から四人で楽しそうにお茶をしていたので声をかけずに此処まで来た次第だ。
「……ド派手にほの花を抱きてぇええええええええええええ!!!!!」
「うるせぇなァ!おい!!しかも、こんなところで卑猥なこと叫ぶんじゃねェよ!!胡蝶に見つかったら大目玉を食らうぜェ?」
「ンなこと言ってもよぉ、派手にほの花不足が深刻なんだわ。毎日顔合わせて、何とか恋人まで昇格したけど、抱けねぇ俺のツラさわかるか?!」
「知るかァ。」
「喧嘩売ってんのか、お前。」
いや、不死川の言葉は尤もなのだが、要するに俺はいま余裕がない。
この余裕のなさは死活問題だ。
ほの花に優しくしたくても抱けないことで随分と気が立っているのだ。