第39章 陽だまりの先へ(終)※
「あ!もう〜!お湯が冷めちゃったじゃないですかぁ!天元様のせいですよ〜!もう〜…、ほの花さん、わたしお湯をもう一回沸かして来るから天元様と待っててね?」
「あ、は、…う、うん。分かった。ありがとう。」
「テメェ、須磨!待ちやがれ!!」
「嫌ですぅ!!私を怒るよりほの花さんにお願いすればいいじゃないですかぁ!!」
須磨さんは手桶を持つと逃げるように部屋を出て行ったが、残された私たちの間に流れたのは"無言"という気まずいものだった。
宇髄さんも敬語使って欲しくなかったのはよくわかった。それは彼が望むのであれば私も少しずつ変えていこうとは思う。
でも、気づいて欲しくないのは私がやきもちを妬いていたという須磨さんがポロリと言ってしまった事実の方だ。
詩乃さんという女性にやきもちを妬いていたのは間違いないと思う。言われてからよくよく考えてみたらもやっとしていた心が晴れ渡るような気分になったから。
ただ本人にそれを知られてしまうのは恥ずかしい。
できれば知られたくないというものだ。
気まずい空間に耐えきれなくなったのは私の方で宇髄さんに声をかけることにした。
「…あ、あの…宇髄さん…?」
すると、立ったままだった宇髄さんが私の前まで来て座り込むと布団の真ん中まで体を動かしてくれた。
そう言われれば倒れ込んでからずっとそこで話をしていたのだから私も須磨さんも布団の端っこにいたのだ。
「…須磨が言ってたこと本当かよ。」
「え…?あ、ああ…、そうなんです。須磨さんが敬語無しにしましょうって…」
「そっちじゃねぇよ。ヤキモチ妬いてたって言ってただろ?」
「あ……」
そっちーーーー?!
いや、確かに須磨さんは間違いなくそう言ったし、内容的にも間違ってはいない。
でも、先ほどまで怒っていたのは敬語を使わなくなる順番が自分のが先じゃないのはおかしいと言う内容だったはず。
突然、私が聞いて欲しくなかった方のことを聞かれてしまい、狼狽えていると同時に再び顔が熱くなっていく。
じぃっと見つめてくる宇髄さんには私の顔がみるみる赤くなっているのは分かっているだろう。
言い逃れなどできやしない。
私は少しだけ目線を逸らすと小さく頷いた。