第39章 陽だまりの先へ(終)※
眉間に皺が寄っている感覚はなかった。
ちゃんと笑顔をしているつもりだったから。
でも、ツンとされた眉間に触ってみれば確かに凸凹としていてそこに皺を寄せていることがわかる。
「あ…、ほ、本当ですね…。」
「何があったんですかぁ?何でも話して下さいねぇ!私、ほの花さんのこと大好きだから相談されたら嬉しいです〜!」
キラキラとした視線を向けられてしまうと、その原因を考えてみるしかない。
「えー、と…何か…?えと、」
「天元様とお出かけされてましたよね?あーー!分かったぁ!天元様に意地悪されてんでしょう?!私が怒ってきてあげます!」
「え?!ち、ちが!違います!宇髄さんは…あ、こ、このネックレスを!買って下さって…凄く良くして下さいました…!」
「わぁ!素敵なネックレス〜!よく似合ってますよぉ〜!」
胸元に顔を近づけてそう褒めてくれる須磨さんに私も嬉しくなって目尻が下がるが、どうやら直接的な原因ではないらしい。
こんなことで眉間に皺は寄せない。
「でも、これが原因ではなさそうですねぇ…あとほかには何かありましたか?」
あとは…?
あとは……
思い浮かべれば考えられるのはひとつしかなかった。
「…宇髄さんの…お知り合いの方に、会いました。」
詩乃さんと言う宇髄さんのお知り合いの方。
宇髄さんのことを好きだった…いや、まだ好きなのかもしれない方。
「天元様のお知り合い??誰でしょう?鬼殺隊の方ですか?」
「いえ…でも、綺麗な女性の方でした。」
「女性?……あーー!なーんだ!ほの花さんったら…うふふっ!何だ何だぁ〜!そういうことですかぁ?やだぁ!可愛いぃぃ〜!!」
たったそれだけ。
名前も伝えてないのに須磨さんは理解したと言わんばかりにうんうんと頷き、私の頭をよしよしと撫でてくれた。
「え?!須磨さん…?」
「もうやだぁ〜!ほの花さんったらそれをそのまま天元様に言ったら大喜びですよぉ!」
「へ?!眉間に皺を寄せたことですか?!」
「違いますよぉ!!もう!相変わらずの鈍チンさんなんだからぁ!ほの花さんはその女の人にヤキモチ妬いてるんですよ〜!!」
「……え?」
それは寝耳に水の話。
眉間に皺を寄せて理由を指摘された数秒後、私の顔は自分でも分かるほど赤く染まっていくのが分かった。