第39章 陽だまりの先へ(終)※
宇髄さんと初めて口付けをしてしまってからというもの、その距離は格段に近づいたと言っていい。
体力を戻すために毎日三十分ほど散歩に連れて行ってくれるようになったこともあり、私の行動範囲は徐々に広がっていく。
それが嬉しくて楽しかった。
もちろん無理はできない体なのは言うまでもなく、散歩に行ったらその後、二、三時間の昼寝を余儀なくされる。
一度昼寝をしなかったら、夕方に微熱が出てしまったことで宇髄さんから昼寝は絶対しろとお達しがきた。
そう言われるのも無理はないので、素直にそのお達しを受け入れると、ある日宇髄さんから嬉しい提案をされた。
「ほの花、散歩も一週間になるし、買い物でも行くか。甘味も食いに連れて行ってやるよ。」
「え…!!い、いいんですか?!行きたいです!」
「そう言うと思った。明日連れて行ってやるから今日は体調整えるために早く寝ろよ。」
宇髄さんのは蝶屋敷というところに週に一度定期検診に行く時以外、お散歩以外に外出をしたことがなかったので私は子どものように楽しみで仕方がなかった。
もう少し体調が戻ったら薬師としての仕事も再開してみたいけど、まだそこまで体力がないのは明らかで提案してみても宇髄さんに却下されるに決まっている。
今は兎に角、自分の今の状態を知ってそれに順応していくことしかないのだ。
「髪短くなっちまったから何か髪飾りでも買ってやろうか?」
「え?甘味食べに行かないんですか?私、髪飾りより豆大福が食べたいです…!」
「…お前は本当にほの花だな、ほの花以外の何者でもねぇわ。」
「…??ほの花です。はい。」
深いため息と共に降ってきたのは熱い唇。
まだそれを受け入れると体が硬くなってしまう。
緊張して息を止めてしまうこともある。
その度に「鼻で息しろ」と言われるのだが、慣れるにはまだ時間がかかりそうだ。
「…ん、…う、ずいさん…」
「はぁー……くそ、お前、可愛いな…」
「宇髄さんのが格好いいですよ!」
「知ってるわ!俺は派手に色男なんだわ!」
一体何に怒っているのかは分からなかったけど、最近私を抱き締めたまま何度か口付けてため息を吐くのが増えた。
それが…少しだけ不安だった。
やっぱり私だと役不足なのかと思えてきてしまったのだ。