第39章 陽だまりの先へ(終)※
雛鶴さんの顔は柔和な表情を浮かべたまま鏡越しの私と目を合わせてくれている。
少しだけ考えるような素振りをするとそのまま口を開いた。
「ほの花さん、正宗様達のこと好きですか?」
「え…?は、はい。もちろんです。幼い頃より一緒に育った兄のような家族のような存在ですから。」
雛鶴さんの言葉の意味は分からないが、聞かれたことは素直に答える。嘘をつく理由も必要もないから。
雛鶴さんは私の言葉を聞き、目尻を下げた。
「私も天元様が好きです。確かに夫婦という関係性でした。里から抜ける時、天元様に付いてきてお互いに支え合って生きてきたのは間違いないです。」
「………」
「あの時、四人で抜けたからこそ、私たちの絆は強く堅いものとなりましたし、今もそれは変わりません。…では、ほの花さんは?」
「え…?」
「陰陽師の里が襲われて、たった四人で生き残ったことでより絆は深まりませんでしたか?」
それは間違いない。
元より兄のように慕ってはいたけど、四人で生き残ったことでそれはより強くなった。
未だ雛鶴さんの言葉の意味はわからないが、その経緯がどこか似通っているようにも感じていた。
「…はい。今でもあの三人が一緒でよかったと思っています。」
「ふふ。ですよね。夫婦という形を一旦取ってしまったから気に病ませてしまったのだとは思いますが、家族だったらその形は変わっていくものだと思いませんか?」
「変わっていく?」
「たとえば…、娘が嫁いだら一人いなくなり、祖父が亡くなったら一人また減り…って家族の形は日に日に変わっていくものですよね?私たちもそうです。天元様に初めて心奪われる女性が現れた。それならば家族だったら喜びませんか?」
「…え、えと…」
言っていることは分かる。
確かにそうかもしれない。
でも、家族と夫婦ではやはりその重みが違うと思うのは私だけだろうか。
私だったら当てはまると思う。
正宗達に良い人ができたら素直に喜べる。現に雛鶴さん達のような素敵なお相手ができたことが心から嬉しかったから。
でも、それは私たちが恋仲になってしまったことで傷心の末に恋仲になったのであれば話は別だと思うのだ。