第39章 陽だまりの先へ(終)※
「自分の得意分野で愛する男を裏切ったことが許せないのだ!薬などという物を使わずとも別れたければ直接言えば良いだろう?!卑怯者にも程がある!!」
「まぁ、確かに最初は薬なんて使わなくてもとは思ったけどよ…。正直、あの頃俺は見境なくほの花に溺れていたし、コイツが気に病むのも仕方ねぇ気もするんだわ。」
「その上、馬鹿みたいに何度も何度も来ていたくせに"生きていればまた来る"と言って突然来なくなった。死んだのか?と思って気にして来てやったら普通に掃除していやがるとはどういう料簡だ!!」
ああ、まぁ…、怒るのも無理はないが、ほの花だって二ヶ月間わざと目覚めなかったわけではない。
しかし、この様子だと煉獄さんは怒っていながらも後悔していたのかもしれない。
息子の杏寿郎とは最期らへんあまり良い関係とはいえなかった。酒に溺れ、当たり散らしたこともあるらしい。
そして仲直りができぬまま、煉獄は帰らぬ人となった。
そして、ほの花は煉獄に遺言のような形で家族の薬の処方を頼まれていた。
煉獄と同じように辛辣な態度を取っていたのであれば突然来なくなったほの花にずっと気に病んできたのかも知れない。
意を決して来てみたら何とほの花は普通に掃除をしていたのだからそう思うのもわからないでもない。
要は怒っていたのは本当だが、今は生きていてホッとしていると言うのもあるのだろう。
「…上弦の鬼と戦った。」
「…何?!」
「ほの花も一緒に行ったんだけどよ。コイツは俺のために命を懸けて生死の境を彷徨った。二ヶ月間意識が戻らなくて、10日ほど前に戻ったら今度はほの花の記憶が無くなっていた。だから煉獄さんのところには行けなかった。許してやってくれ。わざとじゃないんだ。」
記憶さえあれば煉獄さんのことを気にして伝言なり頼んだかもしれないが、いまのほの花は煉獄さんのことすら覚えていない。
そんなほの花を今責めることは酷でしかないのだ。