第39章 陽だまりの先へ(終)※
宇髄さんの屋敷に来てから五日が経った。
外に出て元気に走り回ると言うことはできないけど、朝の玄関の前の掃き掃除をさせてもらえるようになった。
まだ体がふらつくこともあるけど、此処ならば家の前だし何かあっても安心だ。
それに宇髄さんは耳が良いらしくて、私が疲れてため息を吐いたりするだけでも、すぐにやってきて体調の確認をしてくれる。
そこまでしてくれなくても大丈夫だと思う半面、心配してくれているのがわかって擽ったい感覚だ。
外は手が悴むほど寒いけど、部屋の中が暖かかったからかそこまで寒さを感じず、むしろ汗ばんでる私はその状態で手早く終えてしまおうと箒で落ち葉を掃いていく。
まだ朝の8時だ。
通る人も疎で足音も其処まで聞こえない。
少しずつだけど日常が帰ってくるような気がするけど、私の記憶は戻ってこない。
そんなこと気にしなくて良いと言う宇髄さんにどれほど救われたかわからない。
確かに私は記憶を戻すことに躍起になっていたけど、「待ってても良いよな?」と言う宇髄さんにほんの少し肩の力を抜くことができた。
このままの私でも好きだと言ってくれる宇髄さんに私自身も心を開いていってる気がしている。
元より一緒にいる時の安心感はあったけど、今はそれに加えて、ふとした時に彼の姿を目で追ってしまっている。
少しずつ遠くにあったその背中が近づいてくる。
前を歩く宇髄さんは私のために立ち止まって待ってくれている。そんな感覚だった。
(…んー、なんか…変、かも…)
しかし、体が温かい内に掃除を終わらせようとしていたのに、自分の体の熱さが自然のものではないことに気づいたときにはもう既に肩で息をしていた。
完全に発熱している。
心無しか足元まで覚束ない。
今集めた塵だけ塵取りで取ると屋敷の中に戻るために踵を返す。
「…何だ、いるじゃないか…!揺さぶりをかけただけか?!貴様、根性まで腐りきっていたか!?」
そのときだった。背後からの声に振り向いてみると其処にいたのは派手な髪色をした初老の男性。
私を見るなり怒りに震えているその様子に身に覚えはないが、前の私が怒らせたのかもしれないと言うことだけが頭をよぎった。