第39章 陽だまりの先へ(終)※
本当は待ってると言われて嬉しかった。
今の私では宇髄さんを好きだとちゃんと言えなかったから。
でも、そんなことを言うことすら烏滸がましくて出来なかった。
それなのに宇髄さんがどんどんどんどん私の中に入ってくるから。
私の手を引くように、背中を押すように、どんどん私の言葉を引き出していくからもうそれを押し留めることができなくて、口から溢れ出した。
涙も止まらず、嗚咽も止められず。
ひたすら涙を流す私の背中を優しく撫でてくれる宇髄さんの温もりに幸せを感じた。
これは体に残った記憶。
きっと宇髄さんのこの手が私は大好きだったんだ。理屈で考えられないけど、きっと治す前に私は思ったんだと思う。
この手の温もりだけは失いたくないって。
だから止められなかった。力を使うことを。
それほどまでにこの手に助けられた記憶があったんだと思う。
今の私には分からないことだけど、何となくそれだけは確信できた。
「わ、私のせいで…結婚できなかったらどうする、んですか…?」
「んー?つーかさ、お前、俺のこと見くびりすぎじゃねぇの?」
「え…?」
そう言うと右手で私の肩を引き寄せると目と鼻の距離感で物凄いことを言われた。
「俺は音柱宇髄天元様だぞ?ド派手に色男なんだ。好きな女くらい余裕で振り向かせてやるわ。」
「……へ…?」
「さっきから好きになれなかったらみてぇなこと言いやがってよぉ。好きにさせてやるよ。覚悟しておけよ。馬鹿ほの花。」
至近距離で見る彼はやはり美丈夫で今度はその色気と男前の顔にやられてドキドキと心臓が高鳴った。
先ほどまでの緊張感のそれとは違う。
目の前の彼は私の心をものの数秒で鷲掴みにしてきたのだ。
「…わかったか?」
「は、…はい…」
「分かったなら泣き止め。俺はお前の笑った顔がクソほど好きなんだわ。笑え。」
「…は、はい…!」
そう言ってぎこちなく笑ってみたら、宇髄さんは思いっきり口角を指で上に向けて変な顔になった私をゲラゲラと笑ってきた。
そんな子どもっぽさもあるのに、先ほどのような大人の色気も併せ持つ宇髄さんに私はきっといずれ好きになってしまうんだと思ってしまった。