第39章 陽だまりの先へ(終)※
目の前でボロボロと涙をこぼすほの花からは感情が剥き出しになっていて俺は口角を上げた。
(…それでいいんだよ。ばーか。)
「あ、あんなことしておいて…!今更宇髄さんと元通りなんて…記憶がない私でも恥ずかしくてできません…!」
ほら、そこだろ?お前は。いつだって体裁を重んじる奴だからほの花がどこを気にしてるのかなんて分かりきったことだ。
瑠璃の話を聞いて一番最初に思い浮かんだのはそれだろ?取り繕ったりしても無駄だ。
「皆さん、幸せだったのに…!私、横槍入れて勝手に宇髄さんのためとか…っ、鬼殺隊のためとか…っ、言って…!思い上がりもいいところじゃないですか…!」
顔を歪ませて泣きながら伝えてくれるその想いは悲痛だが、俺は待った。ほの花の膿が全部出るまで。
「ひっ、く、それなのに…!宇髄さんを待たせるなんて…!出来ませんよ…!勝手に記憶を消してしまったから因果応報で自分の記憶が無くなったんです。自業自得です!宇髄さんに待ってもらう資格なんてありません…!」
「…資格、ねぇ…」
「私より、もっともっと良い人がたくさんいます…!」
「…本当は?」
「…っ、ひっ、く…え…?」
どれほど愛していても、俺はほの花の本音を引き出してやることはできていなかった。
俺だって後悔してる。過去の自分をぶった斬りたいほどに。
でも、俺たちが生きてるのは"今"だから。
振り返ることはしても後戻りはできない。
「…本音を聞かせてくれ。"今のほの花"は俺に待たれたら迷惑なわけ?」
「…宇髄さん…」
「過去の過ちとかそういうの抜きにして、"今のほの花"はどうしたい?俺はお前の本音が知りたい。」
頭に乗せた手を背中に移動させるとゆっくりと撫でてやれば、再びブワッと顔を歪ませて涙を溢れさせるほの花。
ほら、出しちまえよ。
俺が全部受け止めてやるから。
もう二度とお前の本音を見誤ったりしねぇから。
「…迷惑、なんかじゃ、ない、です…ッ…!」
「じゃ、待ってていいよな?」
「で、でも…!」
「ほの花?待ってるから。待ってていいよな?」
肩を震わせて手で顔を覆ったほの花は小さく頷き、そのまま暫く号泣していた。
俺はそれを止めることなく、泣き止むまで背中を撫で続けた。