第39章 陽だまりの先へ(終)※
宇髄さんの言葉が頭の中で反響している。
ぐわんぐわんと響き渡っていて脳に直接語りかけてくる。
口から何かがまろびでそうで必死に言葉を飲み込み、新たに言葉を探した。
「…わ、私のせいで宇髄さんの時間を無駄にして欲しくない、です。もし…好きに、なれなかったら…、宇髄さんに待ちぼうけ食らわせただけになっちゃいます…」
「…それで?」
「え…?」
「全部言えよ。思ってること。」
宇髄さんの顔は優しく微笑んでいる。
口調もとても穏やかで一定の間隔で脳に優しく語りかけるよう。
「…過去の自分にも申し訳ない、と言うか…私がここで宇髄さんのこと好きになっちゃったら良いとこどりみたいな感じになる、かなって…。」
前の自分は命を懸けて宇髄さんを愛していたのに今の私はその術がない。
どう頑張ってもその時の自分を超えれる気がしない。
「だから…私は自分の記憶が早く戻ってほしいって思ってて…、そうじゃないと、宇髄さんのことを完璧に愛せない気がするんです。」
「ふーん。なるほどね。ほの花の気持ちは分かった。」
そうニヤリと笑った宇髄さんは「半分だけな」と再度口を開いたかと思うと私の頭に手を乗せた。
「お前の完璧って何?俺のこと完璧に愛せたらすげぇの?」
「え、そ、そりゃ…全部知ってないと…」
「違うね。"今のほの花"でも全力で愛してくれたら俺は嬉しいし、記憶が有る無しは関係ねぇよ。要は今のお前は俺と恋仲になりたくねぇってことだろ?断るための口実だよな?」
頭の上に乗せられた手は暖かいのに宇髄さんの言葉は棘がある。
どこか責めるようなそんな言葉に目を見開いて首を振った。
「ち、違います!そうじゃないんです。ただ…待ってもらうのは申し訳ないから…」
「記憶がないことの言い訳にすんな。俺はお前に聞いてんだよ、ほの花。」
「い、言い訳なんかじゃ…!」
「言い訳だろ?記憶さえあれば…って逃げてるだけだろ。お前の言葉が聞きてぇんだよ。ほの花。逃げんな。俺に言ってみろ。言えねぇなら一生お前そのままだぞ。」
何を言われてるのかわからなかった。
でも、何故か私の心に風穴が開いたかのようにそこからじわりと熱い何かが吹き出してくる感覚。
目からはあっという間に涙が溢れ出てきた。