第39章 陽だまりの先へ(終)※
瑠璃さんが居なくなってしまうと、途端に寂しく感じた。
それと同時に独特の緊張感に襲われた。
「なぁ、縁側で茶でも飲もうぜ〜。」
「あ、は、はい!」
そう、宇髄さんだ。
彼からは自分達が恋仲だったということは知らされていない。
要するに今の状態がどんな関係性なのか分からない。
こうやって家に帰ってきてから今日で二日。
昨日はほとんど瑠璃さんとお話してたけど、彼女が居なくなれば必然的に宇髄さんが近くにいてくれる。
本当ならばお茶を淹れるのは私がやらなければならない筈なのにまだ立って歩き回るのはたまに目眩がしてしまって長時間は難しい。
それを知ってる宇髄さんは極力私が動かないで良いように配慮してくれるのだ。
それもごく自然に。
縁側だって徒歩15歩のところにあるし、既にお茶は淹れてくれてあって飲むだけの状態で持ってきてくれている。
外は冷えるけど、今日は暖かい陽射しが照っていて上着を着れば寒くないほどの陽気だった。
「今日はあったけぇーから日光浴すんなら持ってこいだぜ。」
「わぁ、本当ですね。すごく良いお天気です。眠たくなっちゃいそう。」
「寝てもいいぜ?膝貸してやるよ。風邪ひくといけねぇから膝掛け持ってきてやるし。」
「あ、い、いえ!大丈夫です!折角のお天気だから日向ぼっこしたいです。」
恋仲だと言うことを知らされていないのに、彼の行動も言動も恋人にするそれと変わらない
…気がする。
余計に私も意識してしまうのが分かり、何とも落ち着かない。
心臓はドキドキ煩いし、男の人と恋仲になったこともない"今の私"は、宇髄さんとの恋人同士の時間をどう過ごしたら良いのか全くわからないのだ。
このドキドキはきっと緊張感の方。
彼に対してドキドキしているのかと言われたらまだそれは分からない。
美丈夫で素敵な人だとは思うけど…。
どうにもこうにも彼との恋人期間の思い出が失われてしまい、私の中の彼はこの一週間ちょっとの思い出しかない。
流石に一週間で恋に落ちることはなく、恋人扱いしてくれる宇髄さんに若干の申し訳なさを感じているのだ。