第39章 陽だまりの先へ(終)※
瑠璃さんとはその日、夜になるまでたくさん話しをした。
暫く此処にいると言うことだったので翌日もたくさん話せると思ったのにそれが叶うことはなかった。
「瑠璃、今すぐ刀鍛冶の里へ帰れ。鬼に襲われたらしい。鋼鐡塚は無事らしいが、怪我をしたらしい。兎に角すぐに帰れ。」
昼前、突然訪れた宇髄さんの言葉に私の部屋で談笑していた瑠璃さんの顔が見る見るうちに真っ青になった。
たった一日しか一緒にいなかったけど、彼女の性格は勝気で裏表のない性格だ。
その彼女の瞳が不安げに揺れたのを見ると私は居ても立っても居られなくなって慌てて立ち上がると何処に何があるかもまだよく分からない筈なのに迷うことなく、大きな押し入れの中に入れてあった薬を手に掴んだ。
此処にある気がした。
そしてその薬は今の私がみてもどれが何の薬なのかすぐに分かる。
母が作ったものと瓜二つだったから。
私は亡くなった母のそれを受け継いで薬師として"ちゃんと"やれていたんだ。
「瑠璃さん…!これ、持って行ってください!傷薬と痛み止めと…あと、これは湿布薬です!早く鋼鐡塚さんのところに帰ってあげて!きっと…待ってますよ。」
「…ほの花…。ありがとう。」
「今度はお二人に会いたいです。鋼鐡塚さんにも宜しくお伝えください。」
「俺は会いたくねぇんだけど…」という宇髄さんの苦言は置いといて、瑠璃さんを見れば、ふわりと笑って頷いてくれた。
「…其処の馬鹿は置いといてまた来るわ。その時はまた手紙を書くから。じゃ、天元。ほの花のこと宜しくね。」
「おう。一人で行けるか?誰かに送らせるか?」
「大丈夫よ。仮にも住んでたんだから。」
瑠璃さんはそう言うと大急ぎで荷物を纏めて刀鍛冶の里へと帰って行った。
宇髄さんから話を聞くと、刀鍛冶の里に出た鬼は上弦の鬼というやつらしくて、命が助かっただけでも幸運だと言うことを教えてくれた。
私たちが対峙した鬼も上弦だったと言うから自分の命もまた助かったのは幸運なのだろう。