第39章 陽だまりの先へ(終)※
女同士の愚痴なんて話してしまえば割とスッキリしてしまうものでただ聞いてほしいだけ。
瑠璃さんもきっとそう。
其処に答えを求めているわけではないのだ。
鋼鐡塚さんがどんな人かは分からないけど、人物像は何となく瑠璃さんの話で分かってきた。
「…へぇ〜…、そうなんですね。気になりだすとずっと刀を研いでるなんて凄い集中力です…!」
「それで私の誕生日を一日中刀研いで終わるとか意味わからないわよ。ちゃんと言ってあったのに!!」
「そりゃあド派手に酷ぇ男だな!俺のが良い男だろ?!」
「あんたよりは蛍のがいいわ。黙ってろって言ったでしょうが。うるっさいわね!」
「はぁ?!俺のが良い男だわ‼︎な?ほの花!」
「え、ええ…?!」
いや、いつもの私なのであれば此処は頷くところなのかもしれないが、如何んせん私は記憶がない。
恋仲だったことを遠回しに聞いたとしてもそれが今も有効なのかは分からない。
いや、そもそも恋仲だったのは過去の私であって今の私ではないではないか。
どう答えたら良いのか分からずに答えることができないままでも瑠璃さんの話は終わらない。
「ったく煩いわね。それでね、あまりに苛ついたから刀研いでる最中に家出してきてやったのよ。謝ってくるまで帰ってやんない。」
「な、なるほど…。確かにお誕生日だって知っていたならちょっと配慮が足らなかった気もしますね。瑠璃さんのお気持ちお察しします。」
「でしょ?あの刀馬鹿!!」
「俺はほの花の誕生日なら忘れたりしねぇぜ!!」
「うるっっっさい!!黙ってろ!!筋肉達磨!!」
ああ…いや、うん…宇髄さんが此処にいない方が愚痴を吐き出せたことだろう。余程鋼鐡塚さんと言う人に恨みがあるのか全く引こうとしないところを見るにその恨みの深さが垣間見える。
だが、口を出すごとに二人の仲が険悪になっていくのを間に挟まれる私からしたら溜まったもんじゃない。
結局宇髄さんは最期までその場にいて出て行くことはなかったけど、最初にもやっとした"元婚約者"という関係性はすっきりと解消していたのは間違いない。