第39章 陽だまりの先へ(終)※
「何で鋼鐡塚の話なんかほの花にすんだよ!すんな!ンな男の話を聞かせたら耳が腐る!」
「はぁ?あんた、まだ昔のこと気にしてんの?!」
「昔ってなぁ!まだ数ヶ月前の話だわ‼︎俺の女に派手に求婚するわ、舞扇に根付なんて贈りやがって…!今考えても腹が立つ。」
「うるっさいわね。小さい男ね。蛍はもうほの花のことは好きじゃないから安心しなさいよ。」
瑠璃に部屋を準備してくれと言われて、確かにほの花の部屋に泊めるわけにもいかないと思い、準備をして戻ってきたら二人は少しだけ打ち解けていた。
記憶を失っているとはいえ、俺も体感しているから分かるが、体に残っている記憶は脳に残っているものよりも従順だ。
瑠璃に対してすぐに『この人は味方だ』と思えたのならばそれはそれで良いことだ。
だが!!!
何故鋼鐡塚の話になったのか?!
アイツのことは今でもいけ好かない男だと思っているし、正直好きではない。
ほの花の耳にもあまり入れたくない。
……と思っていたのだが…
「は?好きじゃない…?」
俺にとってかなりの朗報が瑠璃の口からまろび出たことで顔が無意識にニヤけてしまう。
それはそうだ。
俺にフラれたら面倒見てやるだなんてことをほの花に直接言った男だ。
正直、フラれてはいないが、あのまま俺が万が一思い出さなければ…ひょっとしたら鋼鐡塚とそういう関係になっていたことも無きにしも非ず。
そんなことを考えると腑が煮え繰り返り全身全霊で奴を駆除しないと気が済まないからだ。
「そう。だって私とそういう仲だから。」
「んな?!はぁ?!いつ?!何処で?!」
「あんたに言ってどうすんのよ。私はほの花と話したいのよ。鬱陶しいわね。」
「何で?!俺にも教えろよ‼︎あの男はほの花のこと諦めたのか?!本当に?!何だよ、そんな話ならもっと詳しく聞かせろよな!ハハッ!」
「だから出ていけって言ってんの!」
瑠璃の苦言など耳に入らない。
俺の脳内は花畑と言っても過言ではないほど浮き立っている。
しかしながら、うっかりと本人の前で今までなるべく言わないようにしていたことを言ってしまっていたことに気づいたのはもう少し後のことだった。