第39章 陽だまりの先へ(終)※
瑠璃さんは知っていることをすべて話してくれた。
私が来たる決戦に向けて宇髄さんに生きていてもらうために忘れ薬を飲ませて自分の記憶を消したということを。
瑠璃さんが言うには宇髄さんは私のことを凄く愛してくれていたと言う。
それはもう本当に"溺愛"だったと教えてくれた。
だからこそいざという時に自分を守る対象で無い方がいいと判断したのだろうと。
「…本当言うとね、あの三人の女子は天元の元嫁なのよ。」
「え?!」
「天元はあんたと出会って、愛してしまったから関係を解消して、あんたと恋仲になった。私はその前にフラれてるから違うわよ。一言物申したくて此処に乗り込んできた時にはほの花が天元の恋人だったわ。」
次々と明らかになる事実に私の脳は爆発しそうな……はずなのに。
きっとそれを"私"は知っていることなのだ。
思ったよりもちゃんと受け入れているようで衝撃はあれど、何とか保っている。
「ほの花はね、ずーっとずーっとあの三人に申し訳ないって思って過ごしてきたんだと思うわ。自分のせいで関係を解消させてしまったからって…」
瑠璃さんの言葉はスゥッと胸に入ってくる。
きっとそれは私が思っていたことなのだろう。
反論なんて思い浮かばない。
ただ"ああ、そうだろうな…"と言う気持ちだけが頭に思い浮かぶ。
川の水が流れるようにそれは私の中を迷いなく流れていく。
「でも…私もさっき聞いたばかりなんだけど、申し訳ないって思う必要がなかったってもうあんたは分かってるでしょう?」
そう言われて浮かぶのはあの六人の幸せそうに笑う姿。
瑠璃さんが知らないと言うことは二か月前の私もまたそのことを知らなかったのだろう。
知っていればそんなことはしなかった……かもしれない。
いや、しなかった。
だってもし知っててしたのであれば好きな人を離れさせてしまうことなのだから。
その時の私の感情は分からない。
でも、しめつけられる胸は申し訳なさと嬉しさと切なさで感情の渋滞が起こっている。
今の私でそうなのだ。
記憶を取り戻していたならば申し訳なさから穴に入りたくなってしまうだろう。