第39章 陽だまりの先へ(終)※
それは今の私が聞いても分からないこと。
でも、分からなくても知っていないといけないことのような気がした。
だって"叱る"と言うことは少なからず、記憶があった頃の私が瑠璃さんに叱られるようなことをしたということだ。
「私が言うべきことか分からないけど…」
「それでも良いんです。私、知りたいです。」
私の決意は揺らがらない。
だって瑠璃さんは私を妹のように思っていたと言っていた。そんな人が言うことはきっと筋が通ったことなんだと簡単に理解できるから。
そんな私を見て瑠璃さんは頷いてくれるとゆっくりと口を開く。
「…ちゃんと天元と仲直りできたのか心配だったのよ。」
「宇髄さんと、仲直りですか?私、宇髄さんと喧嘩をしていたんですか?」
「喧嘩…って言うか…」
きっと瑠璃さんが言わんとしていることは私にとってとても重要なこと。だからこんなに言い淀んでいるんだ。
それでも瑠璃さんから聞きたいと思ってしまった私はそのまま瑠璃さんを見つめていた。
「…天元達に忘れ薬を飲ませたのよ。あなた達、恋人同士だったの。」
それは思ってもいないこと。
私は大きく目を見開くと、少し視線を逸らす。
嬉しいことと嬉しくないことが一緒に訪れた。
宇髄さんが私の恋人だったなんて…あんな素敵な人が恋人だと思うと嬉しくてたまらない。
誰だって嬉しいと思う。
それなのに私は忘れ薬を飲ませた?
何を忘れさせたかったの?
「…え、と…」
「そりゃ動揺するわよね。私だって最初あんたから聞いた時驚いたわ。まぁ、その後ビンタしちゃったけど。」
聞いても分からないこと。
聞かなければ良かったことだったのだろうか。
瑠璃さんは動揺しすぎて二の句を告げない私の頭をポンポンと撫でてくれる。
「聞きたい…?あんたがしたこと。その後私の愚痴もちゃんと聞いてくれるなら話してあげるわ。」
私が知るべきことなのかどうか分からなかった。
ひょっとしたら知らない方が良かったのかもしれない。
でも、私は知りたかった。
過去の自分が何故そんなことをしたのか。
どんなふうに宇髄さんを愛して、どうして記憶を消したのか。