第39章 陽だまりの先へ(終)※
「ほの花、この前見せた手紙の差出人の瑠璃だ。」
「は、はじめま…ひ、久しぶりまして…!神楽ほの花です!」
いくら疲労感があったとは言え、横になって直ぐ眠れるかと言われたらそれは無理だ。
私は天井を見たり、壁を見たりしながら暇な時間を持て余していた。
宇髄さんも私が寝ていると思っているのかなかなか来てくれなかったのに、昼前になって急に部屋に入ってきたと思ったら綺麗な女性を連れてきて驚いた。
すぐに起き上がって乱れた髪を整えていると目の前に並んで座った二人を伺うように見た。
恋人なのかな…?と思ったのも束の間、先日渡してくれた手紙の差出人だと言う。
宇髄さんの周りには美人な人が多い。
胡蝶さんも凄く綺麗だったし、正宗たちの恋人さん達も美人ばかり。
「…体調はどう?」
「え、と…ちょっと長い時間起きてるとまだ疲れてしまうので横にならせてもらってました。今は大丈夫です。」
「そう。あ、ねぇ天元。部屋余ってるなら一部屋準備してよ。ほの花の部屋に泊まろうと思ってきたけど、いきなり知らない女が泊まったら困惑するだろうし。」
「あー、そうだな。ちょっと待ってろ。準備してくるわ。」
宇髄さんは瑠璃さんの言葉に頷き、納得したように出て行ってしまったのでその後ろ姿を見つめた。
初めましての人と二人きりなのは緊張するし、宇髄さんにいて欲しかったなぁ。
「フフッ、天元がいなくなったからってそんな寂しそうな顔しないでよ。取って食いやしないわよ。」
「え…!あ、えと、いや、そ、そんなことは…!」
あまりに心の中を読み取られたような発言に私は狼狽えることしかできずにいると、あることに気付く。
『天元』
瑠璃さんは確かにそう呼んだ。
此処にいる女性たちも『天元様』と呼んでいることには少し気になっていたけど、彼女は呼び捨てだ。
一体どんな関係性なのだろうか。
「…私と天元の関係性が気になる?」
「ええ?!あ!え、いや…!」
「元婚約者よ。」
「…え…?」
それは私にとって十分の破壊力のある言葉。
宇髄さんが美丈夫で女性に引くて数多なのは納得できるけど、こんなに早くその片鱗を目の当たりにするとは思わなかったのだ。