第39章 陽だまりの先へ(終)※
「良かったわね?まだ引退して間もないんでしょ?柱の出番じゃない。」
「はぁ?柱は引退しちまったんだわ。撤回できねぇよ。」
「違うわよ。鬼殺隊の…音柱だっけ?最期の鬼狩りがあるでしょうが。ほの花の心の中に。』
「……あー、そゆことね。そりゃあ、まぁド派手に手強い鬼がいるからな。」
それは本当に最期の鬼狩り。
ほの花に巣食うド派手な遠慮の塊。
それの頚を斬ってこそ俺たちの未来への布石となる。
「あんた達、空回りしてばっかりで見てるこっちはもうお腹いっぱいなんだけど?早く元鞘に戻って子どもでも作りなさいよ。」
「簡単に言うなよな。慎重にやらねぇと心ごと斬っちまう可能性もあるだろうが。」
「天元ってほの花のことになると途端にやけに鼻が利くわね。犬なの?」
「お前、おちょくってんのかよ?!」
瑠璃は昔から諜報が得意。
くのいちとしても優秀だった。だからこういう時の核心をつく時は余程の裏がないと言ってこない。
裏どりが出来ているのかは分からないが、瑠璃は俺が記憶のない間のほの花と密に話をしていたのだろう。俺の知らないほの花の心の揺れ動きをずっと見てきたのだ。
それ故の発言の筈。
ただ今のほの花にその気持ちは無い。
俺に対する気持ちは身を潜めてしまっている。
だけど、その内違和感を感じだす筈だ。
俺の時のように。
そうであってほしい。
いや、そうだろ?ほの花。
俺のことを師匠やただの同居人としてだけには見られなくなってくる。
俺もそうだった。
お前のことが気になって気になって仕方なくなってしまった。
気づいた時には身体はほの花にしか反応しなくなっていて、常に視線はほの花に向けられていた。
離すものか。
もう二度と離さない。
「…あんた達のこと、これでも応援してんの。さ、そろそろほの花のとこに行かせてよ。私も友情を取り戻したいんだから。」
「ああ。分かってる。紹介してやるよ。"改めて"な?」
「何か…癪に障るわね…」
不満そうな瑠璃を促すと渋々立ち上がった。
向かう先はほの花の部屋。
新たな俺の任務ができた。
最期の鬼狩りのための潜入調査の始まりだ。