第39章 陽だまりの先へ(終)※
どうやら胡蝶の言う通り、ほの花は無理の効かない体になってるのは間違いないらしい。
たったこれだけ移動しただけなのにすっかり疲れた表情になってしまっていたほの花に布団をすすめれば、特に断ることもなかった。
遠慮しいのほの花だ。
初めてきた場所でいきなり寝るだなんて申し訳ないと思うような奴だ。
それなのに断らず、素直に出してやった夜着を受け取ったところを見ると、やはり外を歩き回るのは暫く無理そうだと判断できる。
今日はもう一人此処を訪れる予定がある。
昼頃には来るだろうからほの花に会わせる前にことの次第を話しておく必要があるだろう。
「なぁ、瑠璃が来たら一旦、俺を呼んでくれ。話をしておかねぇといけないからな。」
「あ、そうですね。わかりました!」
廊下ですれ違ったまきをにそう言えば直ぐに頷いてくれるので俺は一旦部屋に戻ることにした。
ほの花の部屋の前を通れば衣が擦れる音が聴こえるのでまだ着替えているのだろう。
本当ならば着替えも手伝ってやりたかったが、流石に今の俺たちの関係性でそんなこと出来やしない。
思い起こすのは俺の記憶がない時、ほの花を無理矢理抱いてしまったこと。
あの時、本当に止まらなかった。
正直、今もほの花の体を見てしまえば止まれない気がする。
二ヶ月もの間、俺はド派手に禁欲生活を強いられているが、今回は病気でもなったのか?と思うほど性欲が起こらなかった。
気になるのはほの花が明日は目が覚めるだろうか?明後日目が覚めるだろうか?
そのことだけ。
俺だって人間だ。愛する女が意識不明になっていたら性欲よりも先に頭に浮かぶのは心配や不安だ。
一命は取り留めていたとは言え、目が覚めないことはこのまま一生目が覚めないのではないかという恐怖感にも襲われた。
だけど、ほの花の目が覚めてこうやって話ができるようになってしまうと、目の前にいる愛おしい女を掻き抱いて口づけを出来ないことに少なからず葛藤を強いられていた。
いまそんなことをしたら傷つけるだけ。
分かっているだけに我慢せざるを得なかった。
だから正直、ほの花の体が本調子でないことが俺を制止させる唯一の要因で助かったと言っても過言ではない。