第39章 陽だまりの先へ(終)※
──五日後
ほの花はやはり脳に異常もなく、その後発熱したりもせずに順調に回復していったので問題なく退院する運びとなった。
勿論、無理をせずに過ごすことが大前提だ。
俺も引退したが、ほの花もまた鍛錬をすることができない今、事実上、鬼殺隊の任務からは引退することになるだろう。
何とか歩くことはできるのだが、外を歩かせるのはまだ心配だからという理由で抱き上げて帰ってくると、カチンコチンに固まったほの花が出会ったばかりの彼女そのもので笑いが込み上げた。
「…お前、出会ったばかりの時もそうやって固まっちまっててさ〜。男に免疫ないからって正宗たちに揶揄われてたぜ?」
「え…?!や、やだ、もうーー!!す、すみません…。」
「いや?懐かしい反応だったからよ、何だか新鮮だったわ。」
"やり直したい"と思っていたのは本当だけど、まさか此処まで遡ってやり直すことになるとは思わなかった。
ただ新鮮なほの花の反応が可愛くて毎日毎日ほの花のことを好きになっていく。
"あー、そうだ。こんな感じだったな…"という懐かしさと共に自分の心模様がよくわかる。
こういうところにドキドキしていたのかと思いだしたかと思えば照れた表情にどれほど心臓を鷲掴みにされるか。
結局、俺はやはりどんなほの花でも好きになるのだ。
どこからやり直ししたところで同じことだ。
自分の家が見えてくるとほの花に向かって目的地を指差してみせた。
「此処が俺ん家」
「……ひゃぁ…お、おっきいおうちですね…」
「そうかー?八人も暮らしてんだからこれくらい当然だろ?」
「ええ、それでも…おっきいと思いますけど…」
玄関まで来ると、ガラガラッと扉を開けて「ただいまー」と声をかける。
「おかえりなさーい!」と賑やかな声が聴こえてドタドタと俺たちを出迎えるために一斉に皆が集まってくる。
「あ、え、えと…お邪魔します…」
「違うだろ?ほの花。"おかえり"だぞ?」
元々、遠慮しいの性格ではあったが、今度は甘えさせてやる。俺のそばで。
此処がお前の居場所だ。
俺の言葉を受けて、ほの花はハッとしたように目を彷徨わせてぎこちなく小さな声で言った。
「…ただいま…」
また始めれば良い。
何度だって。