第39章 陽だまりの先へ(終)※
──ほの花へ
元気にしてる?
天元とのことは大丈夫?この前は時間がなくてちゃんと話も聞けなかったから五日後に会いにいくわ。今度は少し長居できると思うから愚痴くらい聞くわよ。
じゃあ、またね。
瑠璃──
瑠璃、さん…。
知らない名前だけど、瑠璃さんの名前を聞くとホッとするような気分にもなる。
脳は知らないと判断しているのに、体は知っていると言っているみたいで気持ち悪い。
でも、"瑠璃さん"に会えると言うことが自分にとって嬉しいことなのだと言うことだけは分かった。
正宗たちはあれから半刻ほどして直ぐに帰ってしまったが、先ほどまで宇髄さんがそばにいてくれてまたも話し相手になってくれていた。
"天元とのことは大丈夫?"
というのはどういうことなのだろうか。
私、宇髄さんと何かあったのかな?
宇髄さんが来てくれているのに手紙を何度も読み返すことなど出来なくて、ずっと悶々と頭の中でその言葉が反芻していた。
宇髄さんは私にとても優しくしてくれるし、話していても楽しい。
笑ってくれると嬉しくて、美丈夫な顔を見るとドキンと胸が跳ねてしまう。
「…女の人から引くて数多だろうなぁ…」
ひょっとして私って宇髄さんのことが好きだったのかな?師匠なのに恋してしまって、それをあの人たちには言えなくて、友達だった瑠璃さんと言う人に聞いてもらっていたのかもしれない。
それならば自分の胸が高鳴る理由も納得できる。
そうだ、これは記憶の中の私の想いだ。
宇髄さんのことが好きだったのであれば、こうやって彼がいることでホッとしたり、ドキドキしたりするのも納得できるから。
ただ一つ気になるのは炭治郎くんが言った言葉だ。
──優しいよ。でもね、ほの花にだけ、ね。
あれは一体どういう意味なのだろうか。
継子だから?優しくしてくれていたということ?
それとも…まさか好きだったことがバレていて優しくしてくれていた…とか?
もしそうならめちゃくちゃ恥ずかしいではないか。
でも、いろんな可能性を考えてみたけど、向けられる笑顔に高鳴る胸を止める術など私に分かるはずもなかった。