第39章 陽だまりの先へ(終)※
「もう一人、お前のことが心配で仕方ない奴から手紙が来てたから持ってきたぜ?」
「お手紙…?」
ほの花は思い出せないことに申し訳なさそうな顔をしているが、此処にいる誰しもがそんなことは気にしていない。
もちろん俺のことを好きだった時のほの花にまた会えたならばそんなに嬉しいことはない。
どんな言葉をかけようか?
まずは抱きしめたい。
その後、呼吸困難になるほどの口づけをして…と、やりたいことはたくさんある。
だけど、目の前にいるほの花だって俺の好きだったほの花。
俺のことを覚えていなくても、好きなのは変わらない。
そして俺の記憶がなかった時もほの花のことを心配して世話を焼いていた奴がいたことを思い出した。
此処に来る前に届いた郵便物中にそいつからの手紙があったので、ほの花は知らないとは思ったが、持ってきてみた。
懐からそれを取り出して差し出すとおずおずと受け取り差出人を確認するほの花。
しかし、やはり見覚えのない名前で俺をチラッと見ると「瑠璃、さん…?」と呟いた。
「ほの花宛なのは分かってたけどよ、今お前がみても分からないだろうと思って中見させてもらった。ちょうど退院の日あたりに遊びに来るからって書いてあった。」
「私の…お友達、ですか?」
「まぁ、そんなとこだな。姉妹みたいだったぜ?お前ら。めちゃくちゃ仲良くてよぉ、コイツらが嫉妬するくらい。」
そう言って三人元嫁たちをニヤニヤしながら見ると「天元様!!」と顔を真っ赤にして怒ってきたが、事実ではないか。
此処に来る道中、ずっと手紙の差出人が瑠璃と言うことでやたらと対抗意識を燃やしていたのはどこの誰だ。
確かに瑠璃との方が仲が良かった。
その理由も今ならば納得できるが、コイツらからすると自分達の方が長く一緒にいるのにあっという間に先を越された気分にでもなるのだろう。
「すげぇ仲良かったし、会ってみねぇか?物事はっきり言う奴だけど、お前のことは結構気にかけてたからよ。」
毒を飲まされたなんてことは今言うべきではない。
今はほの花が少しでも安心して暮らせることが第一だし、瑠璃の存在がまた一役買うかもしれないと思って提案してみた次第だ。