第39章 陽だまりの先へ(終)※
「…悪ぃな。今日はお前の部屋を掃除してたから遅くなっちまったんだ。」
「え…?」
「ま、お前が一週間後帰ってくるかはわかんねぇけどよ。それから掃除してたんじゃ間に合わねぇだろ?お天道様が出てる内に色々やりてぇじゃん?」
それを聞いて嬉しくて嬉しくてまた泣きそうになってしまった。
そんな私に気づいたのかこちらを見ないように頭を撫で続けてくれる宇髄さん。
私はきっとこの人のことを死ぬほど信頼していたんだ。だからこんなにもそばにいるだけで安心するんだ。
「…ほ、本音を言うと…帰ってきて、欲しい、けどよ…。」
逸らした目線のまま気まずそうにそう言ってくれる宇髄さんの耳が真っ赤に染まっていて、やっぱりこの人は大人の色気と子どもの無邪気さを併せ持った素敵な人だと思った。
「…宇髄さんのところに、帰っても…いいんですか?」
「な、っ?!あ、あったりめぇだろ!?むしろ、その…帰ってきて、下さい…。」
さっきから全く目は合わないけど、どうやら帰ってきてもいいと思ってくれているみたいでそれが嬉しくて勝手に頬が緩んでいく。
少し時間が欲しいと言った。
それも昨日のこと。
たった一日で一体何を考えたのだ?
でも、ここまで言ってくれるなら記憶が無くなった私でも受け入れてくれると言うことだと思うし、何より私自身が宇髄さんの顔が見られなくなるのが嫌だった。
半日顔が見られないだけで寂しくて仕方なかった。
今のわたしには宇髄さんほど安心できる人はいない。できれば一緒にいたい。
迷惑でないのであれば。
「…じゃあ…よろしく、お願いします。」
「…おー。任せとけ。ほら、正宗たちもいるしよ。お前に会いたがってたから明日連れてくるぜ。」
「ありがとうございます。はい。私も正宗たちに会いたいです!」
どうやら正宗たちは鬼殺隊ではないのか、あまり気軽にこの胡蝶さんのお屋敷に来てはいけないのだろう。
宇髄さんが一緒なら来れるのかもしれない。
もちろん正宗たちにも会いたい気持ちもある。
私の記憶の中で唯一知っている人だから。
でも、その名前を聞いても今は嬉しいとは思えど、先ほど宇髄さんが来てくれた時のような安堵感はない。
自分の気持ちに首を傾げてしまうが、やはりそれ以上考えることは憚られるのだ。