第39章 陽だまりの先へ(終)※
「ち、違いますって!!俺が泣かせたわけではないです!!た、確かに俺の目の前で泣いちゃったんですけど…!」
「ほら見ろ、お前が泣かせてんだろ?!ふざけんなよ?!テメェ!」
「ギャアアアアアア!痛いぃぃぃぃ!!」
炭治郎くんも怪我人のだろうに首に腕を回して全力で締め上げている宇髄さんを見て、私は慌てて止める。このままでは炭治郎くんが三途の川を渡りそうだ。
「う、宇髄さん!違います!私が勝手に泣いたんです!炭治郎くんはそばにいてくれただけです!」
間一髪、白目を剥きかけていた炭治郎くんがこちらを見て手を合わせてお礼を伝えてくれるが、宇髄さんの眉間には皺が寄ったまま。
「…どうしたよ?何かあったのか?」
「え、えと…どうしたって…。」
いや、そこまで考えていなかった。
そもそも宇髄さんが来なくて寂しくて泣いたなんて私の方がよっぼど子どもみたいではないか。
見る見るうちに真っ赤に染まっていく私に「また熱でも出たか?」と心配そうな顔をしてくれる宇髄さん。
必死に首を振って否定するが、その空気を一変させたのは炭治郎くんだった。
「ほの花、宇髄さんが今日ちっとも来ないから寂しくて泣いちゃったんですよ。昨日、宇髄さんの家に帰ることを即答できなかったことを怒ってるのかな?って。」
「たたたた炭治郎くんんんんっ!?」
良くも悪くも炭治郎くんはとても素直。
私の心境などお構いなしに素直にそのまま私が言ったことを伝えてしまい、益々居た堪れなくて徐々に下がっていく視線は床をとらえた。
(…もう二度と顔上げられないよ…)
恥ずかしくて顔どころか耳まで熱い私はそのまま羞恥心に耐えていると再び宇髄さんの大きな手が私の頭にぽんと乗せられた。
「お前な、女心っつーのをもっと学べ。馬鹿正直な奴だな。もう俺が来たからお前は病室戻れ。栗花落が探してたぞ。」
「女心??…って、あ!カナヲが?わかりました!じゃあね、ほの花!またね〜!」
宇髄さんは子どもなのか大人なのかよく分からない。でも、今目の前にいる宇髄さんは大人の余裕たっぷりで物凄く頼りになる雰囲気を醸し出していた。