第39章 陽だまりの先へ(終)※
「……か、竈門ーー!駄目だろ?!扉を破壊したら‼︎こりゃド派手に胡蝶に怒られんぞーー!」
「えええええ?!ひ、酷っ…!俺何もしてないじゃないですか!!」
「あっははは!退院したら鰻奢ってやっからしっかり謝っておいてくれ。」
「ちょ、嫌ですよ!宇髄さんが謝ってくださいよ!!」
「よし、天丼も付けてやるって〜。」
「嫌ですってーー!!」
宇髄さんの横暴な言葉に不満を露わにする炭治郎くんだけど、何だか楽しそうな二人のやりとりに自然と笑いが込み上げた。
「ふふっ…、すごい、粉々…!」
粉々に砕け散った硝子とバラバラになった木材に扉の原型を留めていない状況は悲惨なはずなのに子どもみたいに年下の子に自分の罪をなすりつける宇髄さんが面白くて、可愛くて笑えてしまったのだ。
「あははっ…!やだぁ…!止まらない…!宇髄さんったら子どもみたい…!」
二ヶ月も眠っていたのだから喜怒哀楽を感じるのも久しぶり。
情緒が不安定なのだろうか。
先ほど泣いていたと思ったら、今度は笑いが止まらなくてお腹を抱えて笑ってしまった。
でも、その様子をぽかんとした顔で見ていた宇髄さんと目が合ったことで漸くそれは止まる。
いや、止めざるを得なかった。
「す、すみません…、笑いすぎました。」
流石に笑いすぎてしまった。
怒られても無理はない。
扉を破壊したことで胡蝶さんに怒られる前に、私が宇髄さんに怒られると思いきや、スタスタと近づいてきた彼が目の前まで来ると徐に頭に手が置かれた。
「やっぱお前は笑ってたほうがいい。今の顔、クソ可愛かった。」
「…へ、へ?!」
「んー?でも、なんか目赤くね?あ、まさか…テメェ、泣かせたのか?!竈門ぉおおお!?何か泣き声聴こえると思って走ってきたらテメェ…!歯ァ、食いしばれ…」
「えええええ?!お、横暴ですよ!!」
心地のいい重さが頭にかかっていたのにそれが外されて再び炭治郎くんに向き合った宇髄さんの後ろ姿を見るとホッとした。
何だろう?
何でだろう?
分からないけど、宇髄さんが近くにいてくれるだけで凄く安心する。
先ほどまで不安で仕方なかったのにもう少しもない。
今あるのはポカポカとした陽だまりのような暖かさだけ。