第39章 陽だまりの先へ(終)※
やっと呼吸が落ち着いてくると炭治郎くんが手拭いを差し出してくれた。
「大丈夫?」
「う…、ごめんなさい。みっともないところ見せて…。」
「いいんだ。泣きたい時は泣けばいいと思うよ。」
「ありがとう」とその手ぬぐいを受け取ると溢れた涙を拭っていく。
泣いたことで幾分気持ちはスッキリしたように思う。
漸く口角が上へと引き上げられると炭治郎くんに向き合った。
「ほの花、何もわからなくて怖いと思うけどね、宇髄さんは信じて大丈夫だよ。」
「…え?」
彼の顔はとても穏やかに微笑んでいる。
瞳は少しの曇りもなくて自信に満ち溢れているようだった。
「宇髄さんはほの花のこと物凄く大切に思ってくれてるよ。目を覚さなかった二ヶ月間ずっと毎日此処に来てほの花の様子を見てたんだって。しのぶさんが教えてくれた。」
「そ、そうなん、ですか…?」
「うん。怪我で入院してた時もほの花のそばを離れなかったって。退院してからも朝から晩までずっとそばに付き添ってたって言ってたよ。」
それを聞いて、私はあることを思い出した。
真っ暗闇の空間の中、誰かの声だけがずっとしていたこと。
それが誰かわからなかったけど、ひょっとしたら宇髄さんだったのかもしれないと感じた。
引き上げてくれた手のひらも宇髄さんくらい大きかった気がするし、昨日背中を撫でてくれた時、驚いたけど嘘みたいに安心したことも思い出した。
「…宇髄さんって…優しいんですね。」
そんな言葉だけでは表せないと思いつつもそれ以外の言葉が出てこなかった。
自分が言うには時期尚早とでも言うかのように頭に浮かぶそれは言葉にすることもできずに頭の中で溶けてなくなる。
「…優しいよ。でもね、ほの花にだけ、ね。」
「え…それって…どういう…「ほの花ーーー!!!!」」
──ガラッ‼︎バリーーンッ‼︎
「ひゃぁ?!」
「わぁあ!な、何だ、宇髄さんか!びっくりしたぁ……ってと、扉が!破壊されてますよーーー!!」
炭治郎くんとの会話の途中でまさかの本人登場。
なのだが、勢いよく開かれた扉は見るも無惨な状態で粉々になって床に散らばり、それを見て顔を引き攣らせている宇髄さんがバツが悪そうにこちらを見ていた。