第39章 陽だまりの先へ(終)※
起き上がった先にある扉には見たことのある人。
でも、宇髄さんではなかった。
「…え、と…」
「あ、ごめん!寝てたか?!顔見に来ただけだから出直そうか?」
額に傷のある短髪黒髪の男の子。
私が目を覚ました時に宇髄さんの後ろにいた子だ。名前は確か…
「…炭治郎、さん…」
「え?!や、やだなぁ!炭治郎"さん"なんて!ほの花は俺のこと炭治郎って呼んでたよ!」
照れ臭そうにそう言って笑う炭治郎さんだけど、記憶が無いのに知ったかぶりして呼び捨てをしてしまうのがどうも気が引ける。
記憶がないだけで私は私なのは間違いないけど、其処に彼の思い出がないのに馴れ馴れしいのではないかと思ってしまったから。
「あ、…と、じゃ、じゃあとりあえず炭治郎、くん…」
「あはは、なんか照れるなぁ!うん。ほの花がそれで良いなら。あ、体はどう?」
炭治郎くんも入院しているのか服が私と同じ入院着を着ている。
私の治癒能力のことも知っていたし、宇髄さんが言っていた鬼との戦いに彼も参加していたのだろう。
「はい。まだ歩いたりすることは出来ないんですが、起き上がる時間を少しずつ増やしていこうかなと思ってます。」
「そっかぁ。焦らずゆっくり治せばいいんだからね?」
「ありがとうございます。炭治郎くんも怪我をされたのですか?」
そう聞いてみると、コクンと頷いて怪我の理由を含めて鬼との戦いの話をしてくれた。
今回倒した鬼は"上弦"と呼ばれる物凄く強い鬼だったということ。
宇髄さんと炭治郎くん、あと"善逸さん"と"伊之助さん"と言う人と力を合わせてやっとのこと倒したとのこと。
確かに宇髄さんは体もかなり大きくて強そうなのにそれでも左目と左手を失うほどの大怪我をしたと言う。そんな強い鬼との戦いにおいて全員無事だったのは本当に奇跡のような出来事なのだろう。
「ほの花も物凄く活躍してたんだよ。怪我人の救護活動とかもしてたし、潜入調査も一緒にしたんだ。」
もう二ヶ月以上も前のこと。
炭治郎くんもだいぶ長い間寝ていたと言うから彼と私は同じようにまだ現実が夢のような状態なのかもしれない。