第39章 陽だまりの先へ(終)※
目が覚めた翌日、私は寝台の上でボーッとしながら天井を眺めていた。
まだ体を起こしていると頭がふらつくことがあるので一日の大半を寝て過ごしているが、一週間でいろいろと決めなければいけないし、いつまでもこうやって寝ているわけにもいかない。
昨日は宇髄さんが夜まで話し相手になってくれたけど、今日はまだ顔を見ていない。
彼の家が私の居場所だったのに「考えたい」だなんて言ったから怒ってしまったのだろうか?
「…今日は来ないのかな…」
既に時刻はお昼を過ぎていて、先ほどアオイちゃん、カナヲちゃんと言う方が涙ながらに訪れてくれて食事を一緒に摂ってくれた。
顔も名前も覚えていなかったが、胡蝶さんに聞いていたそうで私を咎めたりしなかった。
きっと記憶が無くなる前まで友達という類のものだったのかな?
それでも他愛もないことを話したりすることが楽しかったし、食事も嬉しかった。
食事といっても私は二ヶ月も口から物を食べていなかったので、温かい重湯だけ。
それでも久しぶりに胃の中に食べ物が入ったことで体が温かくなって、生きていると実感できて嬉しかったのだ。
彼女達も私が目覚めたばかりで体力がないことを心配して長居はせずに帰ってしまったので、手持ち無沙汰で寝台に横になったわけだが…
「…やっぱり、怒っちゃったのかな…」
一人になると考えるのは宇髄さんのことばかり。
優しい笑顔で、物凄く背も高くて美丈夫の彼。
師弟関係だったというが、今は"柱"という役目を引退したらしい。
私が治しきれなかったせいだが、もうこの能力を使うことは許されない。
宇髄さんもきっと使うことを望んでいないだろう。
たかが師弟関係なのに、彼のことばかり考えてしまうのは昨日たくさん話してくれたことが嬉しかったからだろうか?
今、此処にいないことが寂しくて仕方なかった。
昨日も久しぶりに人と話して疲れたのかうっかり話してる最中に寝落ちしてしまったらしい。
気付いたら朝で其処に宇髄さんはいなかったのだ。
時計の針の位置ばかりを気にして、窓の外を覗いてみたりしていたが、午後三時を過ぎたあたりで諦めて寝てしまおうと思い、寝台に寝転ぶ。
しかし、その瞬間にガラッと開いた扉に私は顔を綻ばせて再びすぐに起き上がった。